この記事を読んでわかること ・日本初の経口避妊薬、メフィーゴパックの承認条件
どうもこんにちは、外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
以前ブログにてラインファーマについて取り上げました。
初の経口避妊薬メフィーゴパックが承認間近ということで、2023年1月末に上記の記事を書きあげました。
そこからはや3ヶ月、この度4月にこのメフィーゴパックが承認を取得する運びとなりました。
承認条件など、色々見ていきたいと思います。
日本初の経口避妊薬メフィーゴパックとは?
ラインファーマが日本で初めて発売することになるのが、日本初の経口避妊薬メフィーゴパックです。
どんな薬なんでしょうか?
4月28日に出されたラインファーマのプレスリリースに端的にまとまっていますので、そのまま引用します。
人工妊娠中絶用製剤メフィーゴ®パック の国内における製造販売承認取得について
~ 人工妊娠中絶の新たな選択肢 ~2023年4月28日
メフィーゴ®パックは、母体保護法指定医師の確認のもとで、1剤目(ミフェプリストン錠1錠(ミフェプリストンとして200 mg))を経口投与し、その36~48時間後の状態に応じて2剤目(ミソプロストールバッカル錠4錠(ミソプロストールとして計800 μg))をバッカル投与するよう、2剤を同梱したパック製剤です。
なお、この薬の適切な使用体制のあり方が確立されたと判断されるまでの当分の間、2剤目(ミソプロストール)投与後、入院又は外来であっても胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。
ミフェプリストンは、プロゲステロン受容体拮抗薬であり、妊娠継続に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きを抑えます。
一方、ミソプロストールはプロスタグランジンE1誘導体であり子宮収縮作用を有しております。ミフェプリストンとミソプロストールを順次投与することにより人工妊娠中絶の成功割合が高まることが示されています。
このたびの承認は、妊娠63日(9週0日)以下の18歳から45歳の女性120人を対象にした国内第Ⅲ相臨床試験結果に基づくものです。
主要評価項目である投与後24時間以内の人工妊娠中絶が成功した被験者の割合は93.3%(95%CI: 87.3-97.1%)で、ミフェプリストンとミソプロストールの順次投与による人工妊娠中絶に対する有効性が確認されました。
また、観察された有害事象のほとんどは軽度又は中等度であり、安全性プロファイルは認容できるものでした。ミフェプリストンは、1988年12月に、フランスで初めて人工妊娠中絶に係る適応で承認されて以降、欧米を含む65以上の国又は地域で、ミソプロストールは、2003年10月にフランスで初めて人工妊娠中絶に係る適応で承認されて以降、欧州を含む93以上の国又は地域で、それぞれ人工妊娠中絶に係る適応で承認されており、WHOガイドライン2022(Abortion care guideline(World Health Organization; 2022))においても、妊娠12 週未満の者に対する(9週0日を超える者に対する投与は国内未承認)人工妊娠中絶の方法として、ミフェプリストンとミソプロストールを順次投与することが推奨されています。
ミフェプリストン錠とミソプロストールバッカル錠から構成されるパック製剤としての承認は、オーストラリア、カナダに次いで、日本は3番目となります。ラインファーマ株式会社プレスリリース 2023年4月28日
経口投与で、投与後24時間以内の人工妊娠中絶が成功した被験者の割合は93.3%
妊娠63日以内(9週)であれば、かなり高確率で妊娠中絶ができることがわかります。
これまで日本ではオペ適応しかなかった中絶方法に対してこの薬が発売になる意義は大きいです。
オペによる侵襲の問題なども指摘されていましたので、望まない妊娠をしてしまった女性にとっては良い選択肢が出来たと思います。
1万2千件のパブリックコメント
一方で、初の経口妊娠中絶薬ということで、社会的な関心も非常に高いものがありました。
承認取得にあたって、パブリックコメントを募集したところ、集まったコメントの数はなんと1万2千件!!
めちゃくちゃ多いですよね。
ほんの一例にしか過ぎませんが、NPO法人ピッコラーレ(妊娠葛藤相談窓口から事業を開始したNPO法人)が出したパブリックコメントを紹介したいと思います。
経口中絶薬承認の可否に関するパブリックコメントを提出しました!
<ピッコラーレ パブリックコメント概要>
「経口中絶薬『メフィーゴパック』の医薬品製造販売承認等」に関する意見について、ピッコラーレが提出した意見の趣旨は下記の通りとなります。
■意見
「性と生殖に関する健康と権利」が保障され、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの視点で「性の自己決定」が大切にされる一助となるよう、経口中絶薬の承認を希望致します。1)経口中絶薬「メフィーゴパック」は、10代をはじめ全ての人の性の自己決定を支え、彼らの人生を社会として守ることにも繋がるものです。人工妊娠中絶の選択肢として、外来での投薬による中絶方法の選択肢を増やしてください。
2)人工妊娠中絶は、ヘルスケアの一つであり、中絶薬「メフィーゴパック」投薬による中絶方法においては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの視点において費用を検討する必要があると考えます。
3)添付文章(案)の8.重要な基本的注意に関して、「緊急時に適切な対応が取れる体制(異常が認められた場合に本剤の投与を受けた者からの連絡を常に受ける体制や他の医療機関との連携も含めた緊急時の体制)の下で本剤を投与すること」とされていますが、「連絡を常に受ける体制をとる」という条件付きでは中絶薬が承認されても、取り扱う医師を増やせないのではないかと考えます。
ピッコラーレ パブリックコメント概要 2023年2月28日
このような意見が出ています。
これ以外にも多くの意見が寄せられました。
寄せられた意見の確認に時間を要するとして、当初は3月に予定されていた承認時期が1カ月ずれ込むことになり、この度4月28日に晴れて承認を取得しました。
承認条件
さて、このパブリックコメントを経て、どういった承認条件が付与されたかみていきましょう。
厚生労働省の留意事項通知や承認条件についてご紹介していきます。
いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について(厚生労働省ホームページより引用)
ここで大事なのは留意事項通知です。
引用してみていきたいと思います。
メフィーゴパックの使用にあたっての留意事項について
「ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての留意事項について」(令和5年4月28日付け薬生薬審発0428第5号 ・子母発第54号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・こども家庭庁成育局母子保健課長連名通知)において、メフィーゴパックの使用上の留意事項を示しています。
主な内容として、具体的には、以下を示しています。
1.母体保護法指定医師の確認の下で投与を行うこと。
2.本剤の適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間、入院可能な有床施設(病院又は有床診療所)において使用すること。また、ミソプロストール投与後は、胎嚢が排出されるまで入院または院内待機を必須とすること。この「適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」については、承認後に十分な調査研究を実施し、その中で適切な医療連携体制のあり方について評価を行い、その結果に基づき検討・判断することとする。いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について 厚生労働省 2023年4月28日
3.各都道府県医師会は、医薬品製造販売業者及び医療機関から、毎月それぞれ販売数量及び使用数量その他必要な報告を受け、それらの整合性を適宜確認すること等により、母体保護法指定医師に対する必要な監督・指導を行うこと。
ポイントは、
「有床施設において使用する制限がついたけど、入院必須ではなく、入院もしくは院内待機という形に緩和された」
というところかなと思います。
「おー、入院を必須とする制限が付かなかったか!!これは驚き。」というのがこういちの感想です。
というのも、こういち予想では入院が必須になると予想していたからです。
前回のブログでも紹介していますが、元々の案としては『プレグランディン腟坐剤(妊娠中期における治療的流産に適応)と同等の厳格さをもって記録・管理する』というものでした。
「プレグランディン腟坐剤」の投与(挿入)は、入院のうえ救急処置のとれる準備を行い、厳重な監視のもとで行うこととされています。
なのでこういちは「入院は必須だろうな」と思っていました。
この制限が今回緩和されたということになります。
緩和案は以下です。
入院可能な有床施設(病院又は有床診療所)において使用すること。また、ミソプロストール投与後は、胎嚢が排出されるまで入院または院内待機を必須とすること。
入院がMustではなく、院内待機で処方ができるようになったのはこの薬にとっては大きいですね。
院内待機でOKということは、外来投与が出来るということです。
これはさきほど紹介したNPO法人のピッコラーレが要望していた1つ目のポイントでもあります。
外来投与が出来る薬ということで処方のハードルがグッと下がります。
多くの患者さんに届ける上でこれは非常に重要なポイントかと思います。
もう一つの大きなポイントは、販売数量/使用数量の報告が義務付けられたことです。
「各都道府県医師会は、医薬品製造販売業者及び医療機関から、毎月それぞれ販売数量及び使用数量その他必要な報告を受け、それらの整合性を適宜確認すること等により、母体保護法指定医師に対する必要な監督・指導を行う
こと。」
このような留意事項通知が出ています。
こういったルールは通常、医療用麻薬など、特殊な薬剤にしか適用されません。
でも今回のメフィーゴパックには適用されました。
これは企業側(医薬品製造販売業者)や医療機関には少し負担ですね。
企業側は大丈夫でしょうが、医療機関側はこのことを理由にして採用しないといった施設も出てくるかもしれないと感じました。
今後に要注目ですね。
成功の鍵は適正使用
こういった社会的関心の高い薬剤が出てくるとき、もっとも大切なことは「適正に使われること」です。
副作用が多く出てブルーレターが出てしまったり、
不適正使用で故意に中絶を発生させるような事件が発生したり、
こういったことが起こってしまうと使用控えが起こります。
従って成功の要因は適正使用です。
現在、ラインファーマはメフィーゴパックの適正使用のためのメフィーゴパック登録申請ページを用意しています。
https://www.linepharma.co.jp/m_new.php (メフィーゴパック登録申請)
メフィーゴ®パックを処方いただくにあたっては、登録申請が必要です。
登録申請できる方は、母体保護法指定医師のみです。
本剤に関わる関係者はイーラーニングを受けていただくことが必須です。
本剤を処方する医療機関は母体保護法指定医師のいる医療機関に限定されます。
本剤の処方を希望する医療機関は、登録申請を行い、本剤の納入可能先医療機関として適切性が確認された上で登録されます。
なお、医療機関に複数の母体保護法指定医師がいる場合には、医療機関を代表する母体保護法指定医師の情報を登録申請者の情報として登録し、 他の母体保護法指定医師は、本剤を取り扱う可能性のある医療関係者の情報として登録して下さい。
また、登録申請者が、異動や退職等で当該医療機関の所属ではなくなる場合には、速やかに後任の母体保護法指定医師をラインファーマ社に連絡して下さい。
医師がメフィーゴパックを処方するにはイーラーニング(E-Learning)が必要です。
承認されて、すぐにこういったページが出てくるということは、事前にPMDAから指示があり、ラインファーマ側が用意していたということが推察されますね。
どのような形で使用が進むのか、今後も注目していきたいと思います!!
ラインファーマの求人
東京のセールスマネージャーのポジションが2023年4月30日の時点では確認ができました。
ご興味ある方はチャレンジするのも面白いと思います。
メフィーゴパックを世の中に広げる仕事ですね。
給与交渉もあるので、できればエージェントを利用したほうがいいと思うのですが、
ラインファーマと契約があるエージェント情報についてはこういちは情報持ち合わせていません。
これまでの経験上外資系バイオベンチャー系の求人は
から最初に情報入ってくるパターンが多い印象です。
一度お聞き頂くといいかもしれません。
参考までにこういちが登録している転職エージェント一覧を掲載しておきますね。
エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。
JAC Recruitment 外資系案件に強みをもっています。
マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。
リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。
【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。
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それでは本日は以上です!
適切にメフィーゴパックの使用が日本で広がることを願います。
最後までお読み頂きありがとうございました!
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