アステラス製薬が8000億円で買収した米国IVERIC BIO!!地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)を伴う加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration:AMD)に対する期待の新薬Avacincaptad Pegolの実力を見ていきます。

製薬会社の将来を考える

この記事を読んでわかること
・IVERIC BIOのパイプライン
・地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)を伴う加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration:AMD)に対する期待の新薬Avacincaptad Pegolの実力

どうも、こんにちは。

外資系製薬会社経営企画室に勤務するこういちです。

このGW期間中にまさかの大型買収の事案が飛び込んできましたね。

アステラス製薬の米国IVERIC BIOの買収です。

金額は日本円にして8000億円超。

思い切りましたね。

アステラス製薬の2023年5月1日のプレスリリースはこちら

米国 Iveric Bio 社買収に関する契約締結のお知らせ

どんな会社なのか興味が沸いたので、調べてみることにしました。

IVERIC BIO

本社は米国のニュージャージー州で、設立は2007年。

研究開発型企業であり、現在コマーシャル品はまだない企業のようです。

時価総額は2023年5月2日時点で51.77億USD。

仮に1USD=130円とすると、6730億円の時価総額ということになります。

株価は買収が発表された5月1日に一気に上昇しています。

ちなみにアステラスの時価総額は3.76兆円。

この買収は市場からも好意的に受けとられているようで、株価はプラスに転じています。

今回の買収の理由は、さきほど冒頭に紹介したプレスリリースでも触れられていますので、原文ママにご紹介します。

1.本買収の目的

アステラス製薬は、VISION「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」の実現に向け、最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベー
ターを目指しています。

研究開発戦略である Focus Area アプローチとして、多面的な視点でバイオロジーとモダリティ/テクノロジーの独自の組み合わせを見出し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます。

現在、「再生と視力の維持・回復」を含む 5 つの Primary Focus を特定し、優先的に経営資源を投下しています。

本買収は、アステラス製薬が掲げる重点領域における製品ポートフォリオ構築のための重要なステップとなります。


Iveric Bio 社は、眼科領域において新規治療薬の研究開発に注力しています。

ACPは、 GA を伴う AMD を対象とし、米国で承認申請中であり、米国食品医薬品局(FDA)から優先審査指定を受け、FDA による審査終了目標日(PDUFA date)は 2023 年8 月 19 日です。


補体因子C5阻害剤である ACP は、GAを伴う AMD の治療薬候補であり、十分な治療を受けていない多くの患者さんに価値を提供できる可能性があります。

ACP は、これまでに 2 つのピボタル試験(GATHER1,2 試験)において、主要評価項目(GA の進行抑制)を統計学的に有意に達成し、この適応症について FDA からブレークスルーセラ
ピー指定 (Breakthrough Therapy Designation)を受けています。


Iveric Bio 社のリードプログラムである ACP を獲得することが、アステラス製薬の経営計画 2021 で定める 2025 年度までの売上目標に貢献するだけでなく、ACPは、fezolinetant や PADCEV とともに収益を生み出す柱として、2020 年代後半に控えるXTANDI の独占期間満了による売上減少を補うことが期待されています。

また、Iveric Bio 社の買収により、アステラス製薬は、コマーシャルチームや、専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む、眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得します。

このようなケイパビリティ獲得を通じて、アステラス製薬はPrimary Focus「再生と視力の維持・回復」における目標達成に向け、臨床開発・市場アクセスを加速させていきます。

米国 Iveric Bio 社買収に関する契約締結のお知らせ 2023年5月1日

っと、このように書かれています。

「2020 年代後半に控えるXTANDI の独占期間満了による売上減少を補うこと」

これがIveric BIO買収の背景です。

ではどんなパイプラインを持っている会社なのか?またACP(Avacincaptad Pegol)とはどんな薬なのか見ていきます。

IVERIC BIOのパイプライン

引用:Iveric Bio Corporate Overview March 2023

Iveric Bioのパイプラインリストはこちらです。

正直、ACP(Avacincaptad Pegol)以外は、まだ海のものとも、山のものとも言えないフェーズです。

興味深いのは、地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)の適応を狙う前臨床の薬剤(IC-500)が一つあること。

またACP(Avacincaptad Pegol)はAutosomal recessive Stargardt disease(常染色体劣性スターガルト病)の適応拡大も狙ってます。

スターガルト病は希少疾患で網膜の遺伝性疾患です。GA同様、視野に障害が出る病気のようです。

日本の窪田製薬がエミクススタト塩酸塩で適応取得をもくろんでいます。

詳細は以下リンクから

 

 

このIveric Bioのパイプラインを見てわかることは、

アステラスの狙いは、ACP(Avacincaptad Pegol)の地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)を伴う加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration:AMD)の市場1点のみであることがよくわかります。

まだ承認前なので、結構怖い買い物をするなあと見ていますが、承認の可能性が高いということで買収に踏み切ったのでしょう。

加齢黄斑変性後期(GA:地図状萎縮)に対する期待の新薬Avacincaptad Pegol

Zimura in Subjects With Geographic Atrophy Secondary to Dry Age-Related Macular Degeneration - Full Text View - ClinicalTrials.gov
Zimura in Subjects With Geographic Atrophy Secondary to Dry Age-Related Macular Degeneration - Full Text View.
A Phase 3 Safety and Efficacy Study of Intravitreal Administration of Zimura (Complement C5 Inhibitor) - Full Text View - ClinicalTrials.gov
A Phase 3 Safety and Efficacy Study of Intravitreal Administration of Zimura (Complement C5 Inhibitor) - Full Text View.

2つの臨床試験の中では、Zimuraという名称で試験が進められています。

上記がClinicaltraials.govのリンクです。

 

Avacincaptad Pegol(ACP)は補体C5阻害薬のことで、硝子体内投与を月に1回行う薬剤になります。

目に直接投与するタイプの薬剤です。

作用機序は以下の図でも確認できますが、補体C5を阻害することによって、GA(地図状萎縮)に関わる炎症と細胞死の進行を阻害することができるようです。

結果ですが、株主向けサイトに公表されているので見ていきたいと思います。

Iveric Bio Corporate Overview March 2023

詳しく見たい方は上記リンクから見てください。

私はすいません、結論だけ端的に紹介します。

【有効性】

試験はGATHER1 (Ph2/Ph3)とGATHER2(Ph3)の二つで構成されています。

GATHER1 (Ph2/Ph3)は用量探索試験も兼ねているもので、ACP2mgと4mg投与群とSham群(針のついてないシリンジを眼球に当てるだけの手技:いわゆるプラセボ群)を設定。

GATHER2試験(Ph3)はACP2mg群とSham群での比較試験で、より患者数を増やした試験になります。

(試験デザインなど詳しくみたい方はIveric Bio Corporate Overview March 2023にアクセスください。)

 

結果ですが、両試験ともにSham群よりもACP2mg群が有効であったことが示唆されています。

GATHER1試験ではGA(地図上萎縮)面積のベースラインから12ヶ月目までの平均変化量(平方根変換)において、Sham群に比べ有意差をもって進行を抑制できていることがわかります。

Sham群に比べ27.4%の減少が確認できています。

 

GATHER2試験ではベースラインから12ヶ月目までのGA面積の平均成長率(傾き)(平方根変換)を見ており、Sham群に比べ統計学的有意差を持って、傾きが緩やか≒進行がゆっくりになったことが確認されています。

Sham群に比べ14.3%の減少が確認できています。

 

 【安全性】

 

安全性についても見ていますが、Sham群と比較し、そこまで大きな違いはなかったようです。

しいてハイライトされているのは、実薬群において

Choroidal neovascularization(脈絡膜新生血管)

Intraocular pressure increased(眼圧の上昇)

が少し上昇したようですが、serious(重症)なものではなかったと報告されています。

 

 

 

この安全性と有効性の結果をもって、現在FDAのレビューが進んでいます。

プレスリリースにもあったように、現在米国食品医薬品局(FDA)から優先審査指定を受け、FDA による審査終了目標日(PDUFA date)が 2023 年8 月 19日に設定されています。

 

いやー、これはアステラスさんにとってはどきどきですね。

承認される目算が高いと見て、買収に踏み切ったと思いますし、この薬が将来のアステラスさんの収益の柱になることは間違いないので、結果に要注目ですね。

ちなみにライバルはペグセタコプラン(補体C3阻害薬)になります。

製品名はSYFOVREで、2023年2月にGA初の治療薬ということで米国FDA承認。販売元はApellis社です。

SYFOVRE™ (pegcetacoplan injection)
Find helpful information and learn about the newly FDA-approved SYFOVRE™ (pegcetacoplan injection).

サイト見てみましたが、有効性や投与方法(25日から60日おきに硝子体内投与)などそこまで変わらないようです。

 

バチバチの市場争いになることが予想されます。

 

アステラス製薬の求人

さて、ここまで見てきたわけですが、肝心の日本はどうなのよ?

 

ということがどこにも書かれていません。

 

そうなんです。

 

実はこの試験は日本で実施されていません。

またもドラッグロス・・・

残念過ぎる。

 

ただ、今回アステラス製薬がIveric Bioを買収をしたことによって、当然、日本での開発が検討されると思います。

なぜなら日本は超高齢化社会ですし、GA(地図状萎縮)の患者さんは数多くいるからです。

(正直、なぜIveric Bio社が日本人患者をエントリーしなかったか謎です。)

 

そうなると、ビジネスチャンスですね。

現在アステラス製薬さんは眼科部隊を有していないはずですから、今後この薬を日本で開発していくことが決まれば、当然開発部門、メディカル部門、コマーシャル部門が組織されていくはずです。

こうなるとチャンスですね。

眼科に強いメーカーとしては参天、ノバルティス、バイエルなどが有名ですが、こういった会社の人はアステラス製薬で働くチャンスが出てくるというわけです。

アステラス製薬の案件は基本転職エージェントの大手であれば紹介可能かと思います。

私は以前エンワールドジャパンさんに案件を紹介してもらったことがあります。

 

 

ご興味ある方は頃合いを見て、ぜひ一度話を聞いてみてもらうといいかもしれません。

こういうのはタイミングが命ですので。

参考までにこういちが登録している転職エージェント一覧を掲載しておきますね。

エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。 

JAC Recruitment 外資系案件に強みをもっています。

マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。



リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。

【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。

【アクシスコンサルティング】コンサルティング会社に興味があれば、登録しておいて損はないです。特にBIG4(PwC/EY/KPMG/デロイト)とのコネクションが強く、実績を出しています。20代なら挑戦するのもおおあり!キャリアの幅がぐんと広がります。

毎回ブログの中でお伝えしていますが、その時々で求人が入ってくるエージェントが異なる印象ですので、上位に上げたうちの1-2個は登録しておくことをお勧めします。

ということで本日の内容は以上になります。

大型買収だっただけに、色々調べて私も勉強になりました。

どなたかのお役に立ったのであればうれしいです!!

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