この記事を読んでわかること ・ダイドーファーマの注力領域-ウルトラレア ・パイプライン情報-現状2つ
どうも、こんにちは。
外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
さて、今日は注目のバイオベンチャーシリーズです。
私のブログの中で多くのアクセスを集めてくれるのがこのシリーズです。
いつもと違うのは今日は”内資”バイオベンチャーという点です。
これまでは外資のバイオベンチャーを中心に情報をお届けしてきました。
今日は趣向を少し変えて”内資”バイオベンチャーの情報をお伝えします。
”内資”バイオベンチャーの記念すべき第一回目に取り上げる企業は「ダイドーファーマ」です。
コーヒーで有名なダイドーグループが2019年に立ち上げた新しい製薬会社です。
私はその存在を2年位前に知りました。
先日Twitterでプレスリリースのことを情報共有したところ、思ったよりも反応がありましたので、ブログにて取り上げることにしました。
今日はプレスリリースの内容と、パイプライン情報を中心に内容をまとめていきたいと思います。
2023年7月24日 ダイドーファーマのプレスリリース
2023年7月24日に開発中の薬剤のPh3の結果に関するプレスリリースが発表になりました。
一部引用します。
アミファンプリジンリン酸塩(3,4-ジアミノピリジン)のランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)を対象とした第 3 相試験結果について
ダイドーグループホールディングス株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:髙松 富也)の連結子会社であるダイドーファーマ株式会社(以下「ダイドーファーマ」という。)は、ランバート・イートン筋無力症候群(以下「LEMS」という。)への効果が期待される治療薬(開発番号:DYD‐301、一般名:アミファンプリジンリン酸塩)について、日本国内における LEMS の患者様を対象とした第Ⅲ相臨床試験の良好な解析結果の速報(6 ヵ月時点での中間データ)を得ましたので、お知らせします。
本試験は成人 LEMS 患者に対するアミファンプリジンリン酸塩を 1 年間投与する第Ⅲ相試験です。
今後、本試験成績等をもとに、日本国内における製造販売承認申請をめざします。
アミファンプリジンリン酸塩は、ダイドーファーマが、Catalyst Pharmaceuticals, Inc.(以下「カタリスト社」という。)から、日本国内での LEMS を対象とした治療薬の共同独占的開発・製造販売実施権および独占的商品化実施権の許諾を取得し、日本における治療薬の開発を行っているものです。
アミファンプリジンリン酸塩は、すでに欧米において LEMS を適応症として承認されている医療用医薬品で、カタリスト社が米国で Firdapse®という商品名で販売しています。
(ご参考)
ランバート・イートン筋無力症候群について
自己免疫性・神経筋接合部疾患で、神経終末からのアセチルコリン放出量減少により近位筋の筋力低下、自律神経症状などの症状を呈しています。悪性腫瘍に合併、あるいは腫瘍の発症に先行する傍腫瘍性神経症候群の 1 つです。
DYD-301 (アミファンプリジンリン酸塩)について
DYD-301(アミファンプリジンリン酸塩)は,経口の K+(カリウムイオン)チャネル阻害剤であり、神経筋接合部の前シナプス膜にある膜電位依存性 K+チャネルを阻害することで、細胞膜の脱分極を引き起こし、膜電位依存性 Ca2+(カルシウムイオン)チャネルを開口させ、細胞内への Ca2+の流入を促進することにより、アセチルコリン(ACh)を含むシナプス小胞のエキソサイトーシスを誘発して、シナプス末端からシナプス間隙への ACh の放出を促進、神経-筋伝達を向上させることで筋肉の機能を改善します。アミファンプリジンリン酸塩は、厚生労働省から希少疾病用医薬品の指定を受けており、ヨーロッパおよびカナダにおいては、既に成人 LEMS 患者、米国においては、成人及び 6 歳
以上の小児 LEMS 患者の治療薬として承認されています。
カタリスト社(Catalyst Pharmaceuticals)について
カタリスト社は米国フロリダ州 Coral Gables に本社を置くバイオ製薬企業であり、神経筋及び神経系の希少疾患に対する画期的な治療法の開発と商業化に焦点を当てております。カタリスト社は、2018 年 11 月に FDA(アメリカ食品医薬品局)から成人の LEMS 治療薬として amifampridine の承認を取得しました。
カタリスト社は患者さんのためをモットーに、希少な神経学的およびてんかん性疾患に対処する革新的なファーストインクラスの薬剤の開発と商業化に取り組んでいます。カタリスト社の米国での製品ポートフォリオには、FIRDAPSE®(アミファンプリジン)10mg 錠があり、これは成人および 6 歳から 17 歳までの小児のランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の治療に承認されています。
2023年 1 月には、カタリスト社は FYCOMPA®(ペランパネル)CIII の米国での商業権を取得しました。
本剤は 4 歳以上のてんかん患者、2 次的な全身発作の有り無しに関わらず部分発作を他剤で治療している患者、12 歳以上のてんかん患者で初発の全身硬直間代性発作を他剤で治療している患者に対しての治療薬として承認されています。さらに、カナダの国立医薬品規制当局である Health Canada は、カナダでの成人 LEMS 患者に対する治療に FIRDAPSE の使用を承認しています。
ダイドーファーマ 2023年7月24日プレスリリースより一部抜粋
米国で発売されていた希少疾患の医薬品をライセンスインして、日本で治験を行いました。
そして、この度そのPh3で、中間報告ではありますが、ポジティブな結果が得られたとのことです。
治験情報はこちらのサイトから確認できます。
「LEMS患者を対象したDYD-301錠の長期投与試験」
登録症例数は10名ですね。
IRBの承認日は令和3年12月という情報を見つけました。
すでに被験者募集は終了しており、割と早いスピードで治験が終了した形になります。
ちなみにこの試験は継続投与試験が続行中です。
「LEMS患者を対象としたDYD-301錠の継続投与試験(拡大治験)」
最初の治験に参加した方に、継続して治験薬を投与するための治験が継続中です。
この試験を継続することによって、より長期のデータを見ることができます。
やはり希少疾患ですと、登録者数は10名、しかもSingle arm studyで、つまりプラセボ群を置かないといった試験でOKなんですね。
患者数を調べてみたら、ガイドラインに以下の記載を見つけました。
●本邦で 2017 年に受診した LEMS 患者は 348 人と推定され,人口 10 万人あたりの有病率は 0.27 人 (95%CI 0.19~0.35) と推計される.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン 2022 P172
348人!!!
ウルトラレアに該当しますね。
10人での治験、かつプラセボを設定しないということにも納得の数値です。
これで採算が取れるのかなとお感じになった方もいると思いますが、この薬剤の薬価はアメリカでは年間5000万円ほどするそうです。
(Twitterで、Nob Yamagataさんに教えて頂きました。ありがとうございます!)
日本でどのように薬価が付くかは注目するところですね。
ヨーロッパの価格は詳しく調べていませんが、外国平均価格調整の扱いを受けるでしょうから、日本でもそれなりに高額の薬価が付くものと思われます。
他に治療薬もなく、経口剤ということで診断されている患者さんはほぼ100%使われるのではないでしょうか?
そうすると1人あたりの年間薬価を仮に5000万円とし、200人の方に使ってもらったとしたら、
・5000万円×200人=100億円
になります。
100億円!!!
ウルトラレアの高薬価の薬だから成せる技ですね。
十分、開発費を回収することができそうです。
ダイドーファーマのパイプライン
結論から申し上げると
2つだけです。
(2023年7月26日現在)
それが以下です。
DYD-701 (LCAT遺伝子導入前脂肪細胞」(予定適応症:「LCAT(家族性LCAT欠損症)」)
DYD-301 (amifampridine)」(予定適応症:「LEMS(ランバート・イートン筋無力症候群)」)
一つはさきほど取り上げたLEMSの薬剤です。
これは米国で発売されていた薬を日本にライセンスインしています。
もう一つはなんと日本のアカデミアのシーズです。
千葉大のバイオベンチャー企業(セルジェンテック株式会社)からの導入品です。
ダイドーファーマのホームページには以下のように記載されています。
LCAT 遺伝子導入前脂肪細胞移植による遺伝子治療について
LCAT遺伝子導入前脂肪細胞を用いた酵素補充療法が千葉大学で開発され、現在、千葉大学にて家族性LCAT欠損症患者さんを対象に医師主導試験を実施中です。
ダイドーファーマホームページより一部抜粋
ちなみに家族性LCAT欠損症についても詳しくホームページで紹介されていたのでご紹介します。
DYD-701 (LCAT遺伝子導入前脂肪細胞」(予定適応症:「LCAT(家族性LCAT欠損症)」)
家族性LCAT欠損症とはどのような病気?
血液中のHDL-コレステロールが20mg/dL未満(※1)に減少?監修:千葉大学医学部附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 横手 幸太郎
コレステロールは、体のはたらきを維持するために不可欠な成分です。
一方、脂肪のとり過ぎなどにより余ったコレステロールは体に有害な場合もあるため、「善玉」と呼ばれるHDLに取り込まれ、血液中を肝臓へと送られ処理されます。
このように不要となったコレステロールをHDLに載せて肝臓に送り込むためには、LCAT(レシチン:コレステロール アシル トランスフェラーゼ)という酵素が必要です。
実際、LCATのはたらきがなければ、不要となったコレステロールが分処理されずに体のいろいろな組織に蓄積されてしまい、病気を引き起こす原因となります。
家族性LCAT欠損症とは、このLCATを作り出す遺伝子(以下「LCAT遺伝子」という)が生まれつき欠けていたり、遺伝子に異常があるため、LCAT蛋白を体の中に作り出すことができない(または十分な量を作ることができない)病気です。LCAT欠損症の患者さんは、不要なコレステロールをHDLに載せて肝臓で処理することができないため、血液中のHDL-コレステロールが著しく減少してしまうとともに、余分なコレステロールが目や腎臓などに蓄積することにより、角膜混濁(角膜が濁り、目が見えにくくなる)や腎機能障害(尿蛋白が見られるほか、腎臓のはたらきが悪くなり、血液から老廃物を取り除けなくなる)、溶血性貧血(動悸、息切れ、めまいなどの貧血症状や黄疸を生じる)などの障害を起こします。
特に、腎機能障害が進行すると、体の中に有害な物質がたまって様々な悪い影響(血圧の上昇、貧血症状、心不全、尿毒症、血液中のイオンバランスの異常など)をもたらします。
家族性LCAT欠損症が2015年7月1日より厚生労働省より難病指定されました(告示番号259:レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症)。
厚生労働省ホームページ(※1) 厚生労働省から2015年7月1日難病指定された時点では、LCAT欠損症の診断基準は、HDL-コレステロールが10mg/dL未満となっていますが、以降HDL-コレステロールが10mg/dL~20mg/dLである患者さんでも、LCAT欠損症と診断された方々がいらっしゃいます。
治療法について
現在のところ、この病気に対する根本的な治療法はありません。
低脂肪食などの食事療法により、食事からの脂肪のとり込みを制限し、体内のコレステロールの量を制限することで、余分なコレステロールの組織への蓄積を減らし、角膜混濁や腎機能障害、溶血性貧血などの障害の発生を遅らせようとする取り組みがなされています。
重症化し、腎不全に至った患者さんに対しては人工透析を行うことで症状改善をはかりますが、これは根本的な治療ではありません。
厚生労働省ホームページ
ダイドーファーマホームページより一部抜粋
「259.LCAT欠損症 付録;概要、診断基準等」内の治療法での紹介内容『4.治療法 現時点で確立された根治療法はなく、古典型LCAT 欠損症に対して、LCAT 遺伝子導入前脂肪細胞移植による遺伝子治療が研究されている。』
治療法がない難病なんですね。
治験情報はこちらから確認ができます。
「家族性レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症に対するLCAT遺伝子導入前脂肪細胞の自家投与による再生医療/遺伝子治療の医師主導治験(投与後24週間)」
Ph1/2試験
予定症例数は3名
これもやはりウルトラオーファンですね。
調べたら患者数は100名未満とのことです。
リクルートが大変かと思いますが、治療法がなく、困っている患者さんのためにぜひ頑張って頂きたいと思います。
ダイドーファーマはウルトラレアの希少疾患にしばらくは注力するようです。興味がある人はエージェントから情報収集しよう。
2021年12月に、Link-Jのインタビューに社長である稲岡 靖規さんが以下のように回答しています。
社長の自己紹介の部分も併せて以下に引用します。
希少疾病治療薬をターゲットに新規参入
――まずは自己紹介からお願いいたします。
稲岡 前職は株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのグループが医療用医薬品事業を担うポーラファルマで約10年間、2017年5月まで代表取締役社長をやっておりました。
最初は同じグループのポーラ化成工業の研究所で天然物化学の研究員を約12年やりまして、医薬品事業に携わったのは25年くらい前で、事業開発や経営企画、開発などに従事しました。
ダイドーグループホールディングス(株)には2018年5月に入社、2019年1月にダイドーファーマ設立に合わせて社長となりました。
――ダイドーファーマが設立されるのを機に参画されたのでしょうか。
稲岡 はい。ダイドーグループはダイドードリンコが飲料メーカーということもあり、飲料事業が中心ですが、「ヘルスケア」をキーワードとした新しい付加価値、新たな事業基盤確立へのチャレンジを中長期的な成長戦略の一つと設定しておりました。
ダイドーグループは創業当初に、配置薬を中心に医薬品に関わっていた経緯もあり、医薬品事業への新規参入を模索しており、今回、新たにゼロから希少疾病を対象とした医療用医薬品の会社を立ち上げるというので、是非参画したいと思い、入社いたしました。
希少疾病は患者数が小さいことから未だに有効な治療薬が存在しない疾患も多数存在し、社会的な課題となっています。
――ビジネスモデルについて教えてください。
稲岡 基本はライセンスインのビジネスモデルです。
国内外のバイオベンチャーやアカデミアが創出した希少疾病の創薬シーズに対し、開発プロセスを見ながら日本での独占的な製造販売権を獲得。
国内で開発して製造販売承認を取得し、患者さんへお届けしていきます。
特徴としては、製薬会社としての大きな組織体制を内部に抱えず、海外のバーチャルファーマのような組織運営を行いたいと考えています。
内部に経験を積んだエキスパートのコア人材を配置し、外部のパートナーとの協業・提携をベースとした開発と事業運営を行っていきます。
できるだけ社内組織を小さくし、固定費を抑え、当面は、患者数の極めて小さい希少疾病、ウルトラオーファンの治療薬に取り組んで、実績を積み上げていきたいと考えております。
――販売についてはどのような展開をお考えですか?
稲岡 製造販売承認を取得して、基本は自社で販売をする予定です。
患者様が本当に少ないウルトラオーファンを対象にした場合、その疾患を治療するKOLドクターや医療施設の数に応じた自販体制を基本として考えています。
ダイドーファーマとして、承認取得と販売にある程度実績が積みあがってきましたら、少し大きな患者数の希少疾病治療薬にもチャレンジし、共同開発、共同販売も検討していければ、と考えております。
Link-J インタビューより一部抜粋 2021年12月10日
承認取得後は自販体制を考えているようですね。
新薬の採用活動にはMRが必要になるでしょうから、少数精鋭の部隊が立ち上がる気配を感じますね。
冒頭のプレスリリースから推察すると
・1年間の最終結果解析 2023年末
・承認申請 2024年1Q
・承認2024年4Q (ODD指定のため)
・発売2025年1Q
最速のタイムラインで、このようなスケジュール感で物事が動いていくと予想します。
営業組織の立ち上げは2024年頃ではないかと思います。
給与に関しては、ダイドーグループになるので、ぶっちゃけそこまで期待はできないものの、間違いなくMRとしてやりがいのある仕事ができると思います。
こういった案件に携わりたいと考えておいでの方は積極的に転職エージェントとコンタクトを取っておくとよいと思います。
内資の案件に強みがあるのは以下2社かなと思います。
・エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。こういち、いちおし。
・マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。
こういう案件はタイミングが命ですので、興味ある方は興味があるとはっきりエージェントに伝えておく必要があると思います。
・エンワールドジャパン さんについては過去のやりとりも含めて詳しく書いているので、良かったら参考にしてくださると嬉しいです。
今日のブログの内容は以上です。
ウルトラレアの領域に関わることができるダイドーファーマでの仕事は、やりがいという面ではまず間違いなくあると思います。
ぜひ情報取ってみてください。
最後までお読み頂きありがとうございました!
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