外資系製薬会社経営企画室こういちの注目の外資系バイオベンチャー。アルナイラム。siRNAを持つ優良バイオベンチャー。パイプラインには認知症薬も!

製薬会社の将来を考える
この記事を読んでわかること
・アルナイラムの2023年1Qの全世界売り上げ
・アルナイラムの認知症薬(Ph1)情報

どうも、こんにちは。

外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。

暑いですね。

7月という感じ。

私は太陽の力を味方につけて、朝活39日連続と絶好調です。

いつまで続くやら。笑

さて、今日はみなさんが大好きな外資系バイオベンチャーシリーズをお届けします。

採用ブームは過ぎたかもしれませんが、いまだに私のブログでアクセスを稼ぐのが以下の記事です。

100人規模以下の外資系バイオベンチャーはみんな興味深々のようです。

ということで今日はアルナイラムを取り上げたいと思います。

日本法人は2018年に設立されました。

過去私はJAC Recruitmentさんから採用情報をゲットしてます。

今日は株主向け情報から抜粋した情報を中心にお届けしますね。

アルナイラムの世界的売り上げ

情報元は2023年5月に発表になったQ1 2023 Earnings Presentationから抜粋しています。

2023年の1Q(1月-3月)の結果はこちらです。

(スマホだと、字が小さいですよね。すみません。)

2023年1QのNet Product Revenuesは$276Mです。

1$=130円とすると、

約359億円になります。

昨年、2022年1QのNet Product Revenuesは$187Mです。

日本円だと約243億円。

順調に売り上げを伸ばしていることが推察されます。

 

 

2023年の目標値についても発表されてました。

それがこちら

$1200M to $1285Mと記載が見つかります。

日本円だと、1560億円 -1670億円となります。

・ONPATTRO

・AMVUTTRA

・GIVLAARI

・OXMULUMO

この4つの新製品の売り上げ目標です。

ではこれらそれぞれの薬がどれくらい売れているか、見ていきます。

 

 

発売されている薬剤の売り上げ

まずは

・ONPATTRO(オンパットロ)

・AMVUTTRA(アムヴトラ)

の2剤についてです。

この2剤の適応症は「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」になります。

日本でもすでに発売されていて、製品ページも充実しています。

オンパットロ.jp

アムヴトラ.jp

どちらもsiRNA製剤です。

オンパットロが3週に1回の静脈注射製剤。

アムヴトラが3ヶ月に1回の皮下注射製剤。

です。

売り上げの推移を見ると、オンパットロが徐々に右肩下がり、それを補填し、さらに売りを伸ばしているのがアムヴトラになります。

つまり、切り替えが進んでいるということですね。

2023年1Qの成績は両剤合わせて、全世界で3160人以上の患者さんに使われているとのことです。

内訳は

・オンパットロが約2050人

・アムヴトラが約1110人

とのことです。

 

売り上げについてはUS(アメリカ)とROW(Rest of World:その他の国)という見せ方をしてます。

両剤併せて$204M(約265億円)です。

内訳は

 USのオンパットロ=$30M

 ROWのオンパットロ=$73M

 USのアムヴトラ=$79M

 ROWのアムヴトラ=$23M

こんな内訳です。

グラフの推移を見る限り、アムヴトラが今後の成長ドライバーであることがわかります。

 

 

次は

・GIVLAARI

・OXLUMO

について見ていきます。

GIVLAARIは「急性肝性ポルフィリン症」を適応症とする治療薬です。

日本でもすでにギブラーリの製品名で発売されてます。

ギブラーリ.jp 

 

 

OXLUMOは「原発性高シュウ酸尿症1型(PH1)」を適応症とする治療薬です。

日本は未発売のようです。

私も初耳でした。

海外での発売は2020年のようです。

一般名はlumasiran。

日本で治験が動いていないか確認しましたが、見つけることができませんでした。

日本では患者数がかなり少なそうなので、開発が進まなかったのかもしれません。

”本邦では1962年から2003年までの原発性高シュウ酸尿症患者59例の報告がまとめられている。”

原発性高シュウ酸尿症 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター 

 

 

さて、この2剤ですが、まずは患者数から。

2023年1Qの段階で

・GIVLAARIは550名以上への投与

・OXLUMOは300名以上への投与

が全世界で確認されています。

 

売り上げですが、

2剤併せて $72M (約93億円)

 USのGIVLAARI=$30M

 ROWのGIVLAARI=$18M

 USのOXLUMO=$9M 

 ROWのOXLUMO=$15M

こんな内訳です。

さて、気になるのは日本の売り上げですよね。

残念ながらQ1 2023 Earnings Presentationには詳しい情報は掲載されていませんでした。

ROW(Rest Of World)で括られてしまうと、お手上げです。

RNAi治療薬の特徴

さて、アルナイラムといえば、RNAi治療薬ですよね。

アルナイラムの日本語ホームページにわかりやすい動画が格納されてました。

それがこちら

細胞の中でRNAi治療薬がどのように働くか見る

RNAiの働きをアニメーションでわかりやすく見る

特徴についてはホームページで以下のようにまとめられています。

RNAi治療薬の5つの特徴

RNAiは現在の生物学や新薬開発において、最も期待され、急速に発展している最先端領域の1つと考えられています。

1.生物にもともと備わっているプロセスを応用 

RNAiはすべての哺乳類細胞にもともと備わっている遺伝子発現の調節にかかわるプロセスであり、small interfering RNA(siRNA)によっても仲介されることがわかっています。生物にもともと備わっているこのプロセスを応用することで、RNAi治療薬は標的とするmRNAに対して高い選択性を持つように設計することができます。

2.分解の機序 

RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)は、RNAiによるmRNAサイレンシングを仲介するRNA-タンパク質複合体です。RISCを介した標的mRNAの分解には、siRNAの1本鎖のみが関与し、多くの標的mRNAを繰り返し分解することができます。

3.理論上、あらゆるタンパク質の標的化が可能 

現在の医薬品の大部分を占める低分子医薬品や抗体医薬品とは対照的に、siRNAはあらゆる遺伝子のmRNAを標的として設計することができます。

これは、これまで治療標的にできなかったタンパク質に対しても、RNAi治療薬を開発できる可能性を示唆しています。さらに、遺伝物質(対立遺伝子)の片方に変異がある特定の疾患において、siRNAは疾患を引き起こす変異のみを標的とし、正常な対立遺伝子はそのまま機能します。

私たちは、疾患の原因やその経路に関与するあらゆる遺伝子を治療標的として、RNAi治療薬を設計できると考えます。

4.疾患発症メカニズムの上流で作用 

私たちAlnylam(アルナイラム)が開発しているRNAi治療薬は疾患の原因となるタンパク質の産生を阻止することが可能です。

RNAiを応用することで、疾患原因タンパク質の血中濃度に関係なく、一貫してその産生を抑制し、疾患をコントロールまたは治療できると考えています。

例えるなら、蛇口から水があふれ出ている状況で“床にあふれた水を拭く”のではなく、“蛇口を閉める”のがRNAi治療薬のアプローチといえます。

5. 新薬候補発見の効率化 

RNAiを応用することで、最適な医薬品候補の同定がより効率的になります。

バイオインフォマティクスツールを使用して標的mRNAに相補的な配列を選び、RNAi治療薬候補を同定します。

RNAi治療薬候補の選択過程では、siRNAの合成と検証を実施します。

siRNAのリード配列はさまざまな動物種で機能するように設計されており、動物モデルにおけるデータをヒト疾患へ応用することが容易になる可能性があります。

さらに、siRNAに特定の化学修飾を施すことで“医薬品的性質”を持たせ、血中における安定性を確保します。

最終的に、RNAi治療薬のドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することで、肝臓など特定の臓器で発現する遺伝子において、一定のレベルでの遺伝子サイレンシングを実現します。

ヒト臨床試験における疾患原因タンパク質の抑制レベルは動物実験と高い相関が認められたことから、RNAi治療薬は前臨床研究から臨床研究へ移行できると私たちは考えています。

これらの理由から、現在開発中のsiRNA治療薬は、モジュール化の概念を応用した再現性の高いアプローチにより、効率の良い新薬開発が実現できるものと考えています。

ノーベル賞にも輝いた生物学上の大きな成果「RNAi」 アルナイラム日本法人ホームページ 2023年7月時点

わかりやすい、、、、ですかね(?)

私は何度か読んでもすぐには理解できず、動画を2回位みて、その後もう1回読んでなんとなく理解ができた、いまそんなレベルです。

大事なポイントは4番目の記載だと感じてます。

4.疾患発症メカニズムの上流で作用 

私たちAlnylam(アルナイラム)が開発しているRNAi治療薬は疾患の原因となるタンパク質の産生を阻止することが可能です。

RNAiを応用することで、疾患原因タンパク質の血中濃度に関係なく、一貫してその産生を抑制し、疾患をコントロールまたは治療できると考えています。

例えるなら、蛇口から水があふれ出ている状況で“床にあふれた水を拭く”のではなく、“蛇口を閉める”のがRNAi治療薬のアプローチといえます。

ノーベル賞にも輝いた生物学上の大きな成果「RNAi」 アルナイラム日本法人ホームページ 2023年7月時点

つまり、「RNAi治療薬によって、疾患の原因となりえるタンパク質を作らせなくしてしまおう!」というのが、この治療薬のコンセプトだと理解しました。

浅い理解ですが、大筋は間違っていないのかなと思います。(誤りがあれば訂正ください。)

こういったコンセプトの下で開発され、現在日本で発売されているのが、

・オンパットロ

・アムヴトラ

・ギブラーリ

になります。

いずれの薬もsiRNA阻害薬で、病気の原因となるタンパク質の産生を抑えるという作用機序を有しています。

こういち注目のパイプライン

さて、そんなアルナイラムが新たに取り組もうとしている疾患領域の一つが認知症です。

私が注目しているのは、ALN-APPという薬剤です。

2023年4月26日にALN-HPP Interim Phase1 Resultsということで、Ph1の中間解析の結果が発表されています。

また5月のQ1 2023 Earnings Presentationの中でも、わざわざページを割いて紹介されていました。

まだPh1ですが、資料が公表されていましたので一部資料を抜粋し、ご紹介したいと思います。

それがこちら。

2023年4月26日に公開されたPresentationスライドです。

結果のご紹介前に、まずは治療コンセプトからご紹介します。

対象は認知症です。

「ALN-APPはアミロイド生成過程の上流でAPPタンパク質の生成を抑えるように設計されている」

とサブタイトルに記載されています。

APPタンパク質とはAmyloid Precursor Protein (APP)のことで、日本語だとアミロイド前駆体タンパク質と訳されます。

APPについては以下のスライドで説明がされています。

認知症の発生機序として、このアミロイド前駆体タンパク質(APP)から切り出されたアミロイドβペプチド()が細胞外に分泌・蓄積することによって、認知症が進行すると考えられています。

このALN-APPは、アミロイド前駆体タンパク質(上流過程)にアプローチする治療法になります。

「上流」と書いたのには理由があって、話題のレカネマブと作用点が異なるためです。

レカネマブの作用点は、アミロイドβペプチド()であり、つまり「下流」です。

以下のサイトでレカネマブの作用機序について確認ができます。

レケンビ(レカネマブ)の作用機序【アルツハイマー型認知症】 – 新薬情報オンライン 

この作用点が異なるという点は今後大きな差別化ポイントになるのではと予想します。

さて次です。

Pre-Clinical(非臨床)のデータでは、APPをターゲットにしたsiRNA薬によって、脳脊髄液(CSF)のsAPPa (可溶性APPa)とsAPPb(可能性APPb)のタンパク質の産生が抑制されたことが示されています(右図)。

Non-Humanと書いてあるので、おそらくマウスかと想像します。

こういった結果を受けて、Ph1がおこなわれています。

Ph1はPartAとPartBで構成されています。

PartAは単回上昇投与(Single Ascending Dose)

PartBはいくつかの投与量(Multipla Dose)

となっています。

対象は健康成人ではなく、すでに早期のアルツハイマー病を発症している患者さんが対象です。

・主要評価項目は安全性

・副次評価項目は薬物動態

・探索的評価項目はAPPの減少効果

こういった部分を評価する試験です。

まず安全性の結果です。

 

”フェーズ1試験パートAにおいて、20名の早期発症アルツハイマー病患者が3つの単回投与コホートに登録

ALN-APPの単回投与は現在まで良好な忍容性を示す

– すべての有害事象の重症度は軽度または中等度であった

– 白血球とタンパク質を含むCSFデータはプラセボと同様であった。

– ニューロフィラメント軽鎖( に関する初期のデータもプラセボと同程度であった。”

忍容性は良好ということで、安全であるということが確認されています。

 

 

次はAPP(アミロイド前駆体タンパク質)の値です。

 

わずか4名での試験でしかありませんが、以下のような結果です

プラセボとALP-APP 25mgでは変化がなさそう

ALP-APP 50mgと75mgを投与された患者さんのsAPPαとsAPPβの値は-80%の推移で抑制

 

ただしこれらには有意差があるわけではなく、一人一人の変化を見ているだけです。

なので今後登録者数を増やして、大規模に見ていく必要があるでしょう。

 

さて、最後は結語です。

 

このPh1の中間解析の結果については以下のように結語がまとめられています。

”-早期アルツハイマー病患者 早期発症アルツハイマー病患者20名が、フェーズ1試験のパートAで3つの単回投与コホートに登録された。

– ALNの単回投与は現在までにAPPの忍容性は良好

   - すべての有害事象(AE)は軽度または中等度であった。

   – 白血球とタンパク質を含むCSF(脳脊髄液)データはプラセボと同様であった。

   - ニューロフィラメント軽鎖( NfL)の初期データもプラセボと同等であった。

– ALN APP治療により、CSF(脳脊髄液)中の可溶性APPαとAPPβが用量依存的、迅速かつ持続的に減少した。

 - 早ければ15日目からバイオマーカーの確実な減少が見られた

 - 最大ノックダウン率はそれぞれsAPPαで84%、sAPP βで90%であった。

 - 両バイオマーカーの中央値70%以上のノックダウンは最高用量で少なくとも3ヶ月間持続した”

とこんな感じです。

ここからはこういち的感想ですが、十分に期待が持てるPh1の結果だったのではと思います。

ただまだまだ少数のデータでしかありませんので、患者数を増やす必要がありますね。

また臨床症状にどう影響したかも今後注目ですね。

今回のPh1の結果からはそのあたりを読み解くことができませんでした。

今後に注目したいと思います。

アルナイラムのパイプライン

認知症の薬に思わず熱が入って長くなりましたが、今後のパイプラインはQ1 2023 Earnings Presentationで公表されてました。

・ATTR Amyloidosis with CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)

・Hemophilia(血友病)

・Complement Mediated Disese(補体介在性疾患)

このあたりがLate Stage(Ph2 or Ph3)で確認ができます。

それぞれの薬について、詳しくは述べませんが、3つの薬剤がすでにそのステージにありますし、Ph1のプログラムも多数控えていることを踏まえると、

パイプライン的にみても大変魅力があると思います。

案件は過去JACさんからもらいました

過去に私はMSLの案件を、それこそずいぶん前ですがJAC Recruitmentさんに紹介してもらったことがあります。

こういった外資バイオベンチャーの案件に強いのが、JAC Recruitmentさんです。

Regeneronの日本法人の契約ベンダーさんでもあります。

エージェントさんと繋がっていないと、この手の話は中々入ってきませんので、外資で働きたいという方は要確認です。

 

 

 

参考までにこういちが登録している転職エージェント一覧を掲載しておきますね。

エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。 

JAC Recruitment 外資系バイオベンチャー案件に強みをもっています。

マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。

リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。

【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。

【アクシスコンサルティング】コンサルティング会社に興味があれば、登録しておいて損はないです。特にBIG4(PwC/EY/KPMG/デロイト)とのコネクションが強く、実績を出しています。20代なら挑戦するのもおおあり!キャリアの幅がぐんと広がります。

毎回ブログの中でお伝えしていますが、その時々で求人が入ってくるエージェントが異なる印象ですので、上位に上げたうちの1-2個は登録しておくことをお勧めします。

最後にPRです。

7/7に以下のNoteを改定しました。

2年間成績が上向かなかったMRが当時の所長の指導で好成績を掴んだストーリーです。

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ご興味ある方いたら手に取って頂けると嬉しいです。

反響が多く、嬉しく思っています。

それでは本日は以上です。

最後までお読み頂きありがとうございました!

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