この記事を読んでわかること ・ultragenyxが日本で開発しているパイプライン情報
*この記事はアフィリエイト広告を利用しています。
どうも、こんにちは、外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
今日も外資系バイオベンチャーシリーズです。
Twitterでたくさんの反応を頂けるこのシリーズ。
私も調べたり、書くのが楽しくなってきています。
まだ立ち上がったばかりの会社というのは、情報があちこちにあったり、Globalサイトにしかなかったりします。
そういうのを探り充てて、整理するのが好きなので、今日はこういちが調べた情報をお届けしますね。
さて今日はultragenyxです。
ultragenyxの日本の求人情報は、あまり見たことがありません。
どこのエージェントが情報を持っているのでしょうか?
正直、私にもまだ入ってきたことはありません。
ご存じの方いたらTwitter でDMください。
前置きはこれくらいにして、今日も調べたことについて、まとめていきたいと思います。
*2023年6月 募集始まりましたね。エージェントは絞ってるようです。案件は【ランスタッド】という情報をネットで見つけました。
ultragenyxとは
ultragenyxの設立は2010年です。
発祥は米国。
重篤な遺伝病に焦点を当て、希少疾病や超希少疾病の治療薬となりうる新規製品の臨床開発と製品化を行っている会社になります。
創業者は医師の方。ダンディな方ですね。
Globalサイトは大変充実してます。
2023年のJP Morgan Healthcare Conferenceの資料を引用して、会社のことを少し紹介していきますね。
https://ir.ultragenyx.com/events-presentations
2023 JP Morgan Healthcare Conference
https://ir.ultragenyx.com/events-presentations
のちほど詳しく紹介しますが、4つの薬がすでに発売されており、5つの適応症でコマーシャルが展開されています。
すでに3200人以上の希少疾患もしくは超希少疾患の患者さんに薬が届いているとのことです。
そして私が印象に残ったのは以下の資料です。
引用:2023 JP Morgan Healthcare Conference
https://ir.ultragenyx.com/events-presentations
紫色がコマーシャル品が展開されている地域。
緑色がCompassionate useが展開されている地域です。
Compassionate use制度ってご存じですか?
この制度は基本的に「命を脅かす疾患などの患者に例外的に未承認薬へのアクセスを可能とする公的制度」のことです。
国によってその制度のあり方は異なりますが、基本的には治験薬として薬が無償で提供されていることがほとんど。
日本では「人道的見地から実施される治験」「拡大治験」と言われるこの制度。
「こんなにたくさんの国でCompassionate useを実施しているんだ」と、驚いてしまいました。
ultragenyxの素晴らしい取り組みだと感じました。
引用:2023 JP Morgan Healthcare Conference
https://ir.ultragenyx.com/events-presentations
Total Product Revenueは2022年の最終着地予想は$352-356M (1$100円換算だと352億円から356億円)となってます。
2023年は$425-450M (1$100円換算だと425億円から450億円)を想定。
規模感的には日本の中堅製薬企業、鳥居医薬品とかあすか製薬位の売上規模ですね。
でもultragenyxのパイプラインは日本の中堅製薬企業とは比べられない位リッチです。
あとから詳しく紹介しますね。
ultragenyx Japan
設立は2021年9月です。
設立2年未満。
出来立てほやほやですね。
社長はキリヤタダシ(Kiriya Tadashi)さん という方。
略歴は以下の通りです。
- Biogen (2016-2021) Head Director, Rare Diseases Business Unit
- Alexion (2014-2015) Manager, Country (Japan)
- Synageva Biopharma(2014-2015) Manager, Country (Japan)
- Sanofi Genzyme (2008-2014) Director, Marketing (Japan, Asia Pacific)
Marketing 出身の社長さんで、Rare Disease 畑の方であることがわかります。
日本のホームページリンクはこちら
Globalの焼き直しサイトなのと、日本のページやプレスリリースが非常に少ないのが現状です。
今後、もう少し日本市場向けにカスタマイズされていくのかなと想像します。
さて、現在ultragenyx Japanがコマーシャル品で扱っているのは日本初となるムコ多糖症Ⅶ型治療剤であるメプセヴィ点滴静注1剤のみです。
アミカスが開発を担い、ultragenyx Japanが承継したとプレスリリースが出ております。
ムコ多糖症 VII 型治療薬「メプセヴィ点滴静注液 10mg」 製造販売承認 承継のお知らせ
■承継の経緯
本剤は、米国 Ultragenyx Pharmaceuticals Inc.(NASDAQ:RARE、以下、UGX)が開発したムコ多糖症Ⅶ型の治療薬で、2019 年に UGX と米国 Amicus Therapeutics, Inc. (NASDAQ:FOLD、以下、Amicus)が、日本における本剤の開発に関するライセンス契約を締結し、2022 年 1 月 20 日付でアミカス・セラピューティクス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締 役:クラウス・アイラセン、以下、ATKK) が本剤の製造販売承認を取得しています。
今般、UGX の日本法人が設立されたことから、Amicus と UGX は、本剤の開発元であり、海外での製造販売を既に行っている UGX の日本法人である UGX-Japan に、本剤の製造販 売承認を承継することが、日本の患者さんに対する最善の医療提供になると判断し、この度の承継に至りました。
■日本における開発経緯
本剤は、日本先天代謝異常学会とムコ多糖症患者家族の会より厚生労働省に開発の要望書が提出され、2018 年 7 月 4 日に開催された第 35 回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外 薬検討会議での結果を受けて厚生労働省が開発企業の募集を行い、ATKKより厚生労働省に開発の意思を申し出たことから、開発が進められました。
2022年7月14日 アミカス・セラピューティクス株式会社 プレスリリース
https://www.amicusrx.jp/pdf/news_220714_01.pdf
アミカス社的には、開発した製品を持っていかれた形になるので、気持ちが複雑な人も中にはいるのではと感じましたが、そのあたりの裏事情はどうなっているかまではわかりませんでした。
さて、この「メプセヴィ点滴静注液 10mg」ですが、どれくらいの売上が見込まれるのでしょうか?
そこは中医協の薬価算定資料が参考になります。
中医協資料によると
- メプセヴィの薬価:1瓶25万9932円。
- 投与予定患者数: 6人
- ピーク時(10年度目)売上高:6.2億円
6人!!
ウルトラオーファン(超希少疾患)という部類の薬剤ですね。
こんなに少ないとは思いませんでした。
日刊薬業の記事情報なども見ていますが、全世界の患者数は200人程度とのこと。
すでに国内では発売後4人の患者さんに使われているようです。
予想ピークは10年目ですが、6人以上は使われそうですね。
とはいえ、売り上げ規模としては10億円に届くかどうかというところですので、規模拡大には次なる新薬が待たれますね。
ちなみにultragenyx Japanの2022年末時点では社員数は1桁台のようです。
詳しく情報みたい方は、以下の記事が参考になるかと思います。
日刊薬業 2022年11月30日
ultragenyx(Global)のパイプライン
この売上規模ですと、日本の社員数の急拡大は見込めないことがご理解頂けるのではと思います。
今後も少数精鋭でビジネスを展開していくのでしょう。
そうすると、気になるのは規模拡大を担う、パイプラインの存在です。
どんなパイプラインを有しているのでしょうか?
まずはGlobalサイトを覗いてみましょう。
Ultragenyx Pipeline List 2023年2月10日時点 https://www.ultragenyx.com/our-research/our-pipeline/
結構数がありますね。
(画像小さくてすみません、詳しく見たい方はリンクからどうぞ。)
開発は4つの柱で動いていることがわかります。
- Biologic 生物学的製剤
- Small Molecule 低分子
- Gene Therapy 遺伝子治療
- ASO/mRNA アンチセンスオリゴヌクレオチド/メッセンジャーRNA
米国では、承認されている適応症が5つ(製品としては4つ)、Ph3が1つ、Ph2が3つ、Ph1が3つ、前臨床が2つという状況です。
協和キリンが創製したヒト型抗線維芽細胞増殖因子23(Fibroblast Growth Factor 23、以下「FGF23」)モノクローナル抗体「クリースビータ®」を米国ではUltragenyxと協和キリンと共同で開発および販売に取り組んでいるようです。
この売上の貢献が大きいんでしょうね。
色々調べるとクリースビータ®の全世界の売上が1000億円を超えているとのことですから、そこの収益がultragenyx的には大きいのだろうと予想します。
と思って、株主向けの情報を調べたらクリースビータ®はやっぱりRevenueへの貢献が大きいですね。
引用:2023 JP Morgan Healthcare Conference
https://ir.ultragenyx.com/events-presentations
クリースビータ®の2022年の予測は$277-279M (1ドル100円換算だと、約277億円-279億円)と出てます。
この売上は、北米・南米・ヨーロッパを含むと記載されています。
この売上があるので、ultragenyxとしては開発に投資出来ているということがよくわかります。
日本では残念ながらクリースビータ®は協和キリンさんが発売していますので、日本法人にこの売上は望めません。
しかしながら、海外でこれだけの売上規模を確保できている会社であればまず潰れることはありませんし、海外が好調であれば、日本側にも人件費含めて投資が継続されるでしょうから、十分な予算と高い年収も期待できますね。
ultragenyx(Japan)のパイプライン
では日本での開発状況はいかがでしょうか?
ultragenyx Globalのパイプライン情報を元に米国で承認されている薬もしくはPh3/Ph2の段階の薬に絞って、日本でいま開発状況がどうなっているか見ていきたいと思います。
(数が多いので適応症と治験情報だけになりますが、ご勘弁ください。)
結論から申し上げると、6つの薬の内、3つの薬のPh3試験が日本でも進行していることが確認されました。
(見つけ切れていないかもしれませんが、その場合はご容赦ください。)
①Evkeeza®(evinacumab) 米国では発売済
【適応症】
ホモ接合性家族性高コレステロール血症 Homozygous Familial Hypercholesterolemia (HoFH)
【日本での開発状況】
GlobalのPh3がすでに完了しておりますね。JAPICに情報がありました。
“家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者を対象にエビナクマブの長期安全性及び有効性を評価する試験”
【予定試験期間】
2019/05/31 ~ 2022/04/30
【予想】
日刊薬業の記事によると日本では2023年中に申請、2024年に承認・発売を見込んでいるとのことです。
すでに米国では承認・発売されておりますので、高確率で日本でも発売されることが予想されます。
日本ではすでに上市されているメプセヴィに次ぐ新薬になることが予想されます。
################################
②Dojolvi ® (triheptanoin) 米国では発売済
【適応症】
長鎖脂肪酸酸化障害 Long-Chain Fatty Acid Oxidation Disorders (LC-FAOD)
【日本での開発状況】
開発なし (Global試験はDone。2023年2月時点で日本のサイトの登録は確認できず。)
【予想】
開発情報を検索しましたが日本の施設の登録がないため、日本では発売されないのではと予想します。
################################
③UX111 (ABO-102) 米国未発売
【適応症】
ムコ多糖症 IIIA型 Mucopolysaccharidosis Type IIIA (MPS IIIA)
【日本での開発状況】
開発なし (Global Ph3試験は進行中。2023年2月時点で日本のサイトの登録は確認できず)
【予想】
開発情報を検索しましたが日本の施設の登録がないため、日本では発売されないのではと予想します。
################################
④DTX401 米国未発売 遺伝子治療製品
【適応症】
糖原病Ⅰα型 (グルコース-6-ホスファターゼ 欠損症)Glycogen Storage Disease Type Ia (GSDIa)
【日本での開発状況】
”A Study of Adeno-Associated Virus Serotype 8-Mediated Gene Transfer of Glucose-6-Phosphatase in Patients With Glycogen Storage Disease Type Ia (GSDIa)”
Ph3が絶賛進行中。
日本では熊本大学と大阪市立総合医療センターで治験が進行中のようです。
【予定試験期間】
2021年11月-2024年4月完了予定
【予想】
2024年に試験が終わるため、2025年申請、2026年承認・発売を予想します。
遺伝子治療なので高い薬価が付くのではと予想します。提供施設も限られるかもしれませんね。
################################
⑤DTX301 米国未発売 遺伝子治療製品
【適応症】
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症 Ornithine Transcarbamylase (OTC) Deficiency
【日本での開発状況】
Ph3が絶賛進行中。
日本では熊本大学のみ入っている模様。
”Clinical Study of DTX301 AAV- Mediated Gene Transfer for Ornithine Transcarbamylase(OTC) Deficiency”
【予定試験期間】
2022年10月-2028年12月 (2024年12月に主要評価項目評価予定)
【予想】
患者のエントリー次第ですが、2024年に評価ができれば、2025年申請、2026年承認・発売。
あくまで予想です。
これも遺伝子治療なので、高薬価。ただし、施設限定かもしれませんね。
################################
⑥UX143 (setrusumab) 米国未発売
【適応症】
骨形成不全症 Osteogenesis Imperfecta
【日本での開発状況】
開発なし (Global試験は進行中。2023年2月時点で日本のサイトの登録は確認できず)
【予想】
開発情報を検索しましたが日本の施設の登録がないため、日本では発売されないのではと予想します。
################################
さて、ここまで各薬剤について見てきましたが、
一番上市が早そうなのが
エビナクマブ
適応症: ホモ接合性家族性高コレステロール血症
次が
DTX401
適応症:糖原病Ⅰα型 (グルコース-6-ホスファターゼ 欠損症)
次が
DTX301
となりそうです。
いずれもオーファンもしくはウルトラオーファンですね。
特に遺伝子治療(DTX401・DTX301)は高薬価になるでしょうからUltragenyxの収益を支える柱になるのではと予想します。
*注意
あくまで調べた中で個人的な予想・見解を述べているだけに過ぎませんので、申請・承認・発売の時期について保証された情報ではありません。
その点は十分にご留意ください。
*追記 2023年3月31日
2023年3月31日にウルトラジェニクスに関するミクスの記事が出されましたね。
その中で日本の開発プロジェクトに関するUpdateがありました。
なんと9つのプロジェクトが動いていくということです!!
HoFH治療薬・エビナクマブ 日本で5月申請、24年上市を計画 MR採用へ
国内の開発プロジェクトは、
▽ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)を対象疾患とするエビナクマブ(抗ANGPTL3モノクローナル抗体)
▽骨形成不全症を対象疾患とするセトルスマブ(抗スクレロスチンモノクローナル抗体)
▽長鎖脂肪酸代謝異常症を対象疾患とするトリヘプタノイン(基質置換)
▽ムコ多糖症III型を対象疾患とするUX111/ABO-102(AAV9遺伝子治療)
▽糖原病I型を対象疾患とするDTX401(AAV8-G6Pase遺伝子治療)
▽オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症を対象疾患とするDTX301(AAV8-OTC遺伝子治療)
▽ウィルソン病を対象疾患とするUX701(AAV9-ATP7B遺伝子治療)
▽CDKL5欠損症を対象疾患とするUX055(AAV9遺伝子治療)
▽アンジェルマン症候群を対象疾患とするGTX-102(アンチセンスオリゴヌクレオチド)
――の9つとなる。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=74575&ex230331e
いや、これはすごいですね!!
激熱だと思います。
私のブログの中で、開発情報もお伝えしてますが、現時点ではまだ日本の施設情報が確認できない試験も複数あり、上記では「日本では発売されないのでは?」と予想しました。
しかし、CEOのインタビューから推察すると、今後日本も試験に組み入れられたり、新たな試験がスタートしてくということが予想されます。
そうなったらすごいです。
遺伝子治療もわんさかありますし、超魅力的です。
これだけのプロジェクトを進行するには、圧倒的に人が足りないので、開発部門、メディカル部門、コマーシャル部門、営業部門、多くの部門で採用活動が進んでいくものと推察します。
ultragenyxの求人・年収情報
上市されたメプセヴィおよびパイプランの薬剤群の適応症から考えると、MRの数は少なく維持するのではと予想します。
日刊薬業の記事では2022年11月現在でメプセヴィ担当のMRはなんと1人だけのようです。
日本法人の社員数もまだ一桁とのこと。
従って、しばらくは今後も少数精鋭でビジネスをしていくのでしょう。
超優秀なスーパーウルトラMRもしくは強力なコネクションを持っていないと入社できないようなそんな会社かもしれません。
米国からスタートしている会社ですし、すでにGlobalではクリースビータ®の売上で収益は安定しているでしょうから、高い年収が期待できると思います。
かなり少数精鋭でビジネスしていくでしょうから、MRでも1200-1700万円+RSUというのもあり得るかなと思います。
(あくまで予想です。情報について確証はありません。)
求人情報は残念ながらいまのところ、私のもとには入ってきていません。
情報が欲しい方は転職エージェントを積極的に活用し、希望を伝えて自ら取りに行くしかないかなと思います。
*2023年6月追記。
募集始まりましたね。
案件は【ランスタッド】という情報をネットで見つけました。
参考までにこういちが登録しているエージェントを以下に記載しますね。
エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。
JAC Recruitment 外資系案件に強みをもっています。
マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。
リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。
【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。
【アクシスコンサルティング】コンサルティング会社に興味があれば、登録しておいて損はないです。特にBIG4(PwC/EY/KPMG/デロイト)とのコネクションが強く、実績を出しています。
MRさんはご存じない方も多いみたいですが、エンワールドジャパンさんは製薬専門チームがあり、対応が丁寧で結構情報持っているので個人的にはお勧めです。
ということで本日は以上になります。
最後までお読み頂きありがとうございました!!
参考になったなと思ったら、Twitter読者の方はリツイートで拡散にご協力いただけると大変嬉しいです☆
コメント