この記事を読んでわかること ・ホライゾン・セラピューティクスのこと ・ホライゾン・セラピューティクス・ジャパンのこと
どうも、こんにちは。
外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
今日はアクセス数の多い、外資系バイオベンチャーシリーズをお届けしたいと思います。
外資系バイオベンチャー、みんな興味深々なことがアクセス数の様子からも伺えます。
さて、今日はホライゾンセラピューティクスです。
2022年12月にアムジェンに買収されることが発表されたこの会社ですが、J&Jやサノフィも買収に関心を寄せていたとのこと。
“希少疾患医薬品のホライゾン、アムジェンなど3社が買収に関心”
どれだけのポテンシャルのある会社なのか?
調べた情報をまとめていきたいと思います。
結論としては、買収も納得の製品群とパインラインでした。
それではどうぞ。
ホライゾン・セラピューティクスとは
まず手始めにGlobal ホームページを見てみることに。
そこには設立者のビデオと以下の記載がありました。
””Our story began long before Horizon was founded in 2008.
In college, CEO Tim Walbert was diagnosed with an autoimmune condition and 10 years later, after seeing more than 100 physicians, was diagnosed with a rare disease.
Horizon is so much more than a business to Tim.
It’s an investment in his future and the future of other people living with rare diseases. For him, Horizon is as personal as it gets.”
”私たちの物語は、2008年にHorizonが設立されるずっと前に始まりました。
大学時代、CEOのティム・ウォルバートは自己免疫疾患を患い、10年後、100人以上の医師に診てもらった結果、希少疾患であると診断されました。
ティムにとって、Horizonはビジネス以上の存在です。自分自身と、希少疾病を抱える他の人々の未来への投資です。
彼にとっては、Horizonは自分自身と同じように大切なものなのです。”
かっこいい文言ですね。
さて、少し細かい話に入ります。
設立は2008年。
本社はアイルランドのダブリンにあります。
(脱線:ダブリンといえば、ギネス発祥の地。ギネスストアハウスのギネスビールは格別です。)
設立者はTim Walbert。
自身が免疫疾患の希少疾患を持つ患者さんとのことを公表しています。
Globalホームページでも実際に30秒程度のインタビューが載ってます。(上記リンクからアクセス可能。)
Globalホームページを見ると、すでに全世界で2000人の従業員がいることが示されています。
ではどれくらいの売上規模を誇る会社なのでしょうか?
投資家向けのページで2022年の業績が2023年3月1日に発表されていましたので、共有します。
(in millions except for percentages) | Q4 22 | Q4 21 | FY 22 | FY 21 |
$ | $ | $ | $ | |
TEPEZZA® | 493.5 | 589.6 | 1,965.7 | 1,661.3 |
KRYSTEXXA® | 216.1 | 170.3 | 716.2 | 565.5 |
RAVICTI® | 87.5 | 74.4 | 325.6 | 291.9 |
PROCYSBI® | 54.9 | 47.4 | 210.0 | 189.9 |
UPLIZNA® | 41.8 | 25.8 | 154.6 | 60.8 |
ACTIMMUNE® | 30.1 | 30.6 | 126.1 | 117.2 |
PENNSAID 2%® | 7.2 | 48.9 | 73.8 | 191.6 |
RAYOS® | 6.7 | 13.3 | 41.9 | 56.9 |
BUPHENYL® | 2.1 | 2.1 | 7.3 | 7.9 |
DUEXIS® | 1.7 | 11.5 | 4.9 | 74.0 |
QUINSAIRTM | 0.2 | 0.3 | 1.1 | 1.0 |
VIMOVO® | 0.2 | 0.3 | 1.8 | 8.4 |
Total Net Sales | 942.0 | 1,014.5 | 3,629.0 | 3,226.4 |
2022年の全世界の売上高は$3629 Million
(計算を簡便にするために仮に1$=100円にすると、3629億円。)
特に成功しているのが甲状腺眼症の新薬。
その名もテプロツムマブ(米国での商品名はTEPEZZA®)
アメリカで大きく売り上げを伸ばしてます。
$1965 Million
(計算を簡便にするために仮に1$=100円にすると、1965億円。)
それ以外にもすでに上市している薬剤が数多くあることが、業績のリストから読み取れると思います。
日本では視神経脊髄炎の再発予防の薬として、田辺三菱から発売されているUPLIZNA®(一般名:イネビリズマブ)がありますが、導入元は実はホライゾンです。
日本ではあまり馴染みのないホライゾンですが、USでは多くの上市品があり、プレゼンスのある会社ということがご理解いただけたかなと思います。
ホライゾン・セラピューティクスのパイプライン
次にパイプラインです。
これもGlobalホームページを見てみましょう。
たくさんありますね。
わかりやすいリストが2022年のQ3のFinancial Resultに掲載されていたので、こちらをブログでは引用します。
多分小さくて画面では全然見れないですよね。
ここで伝えたいのは数が豊富だということです。
- >20 programs(20以上のプログラム)
- Initiated 3 clinical trials year-to-date(3つの臨床試験をスタートさせた)
- 10 potential approvals in the second half of the decade (今後10年で、その後半に、10の承認を得る可能性がある)
とスライドの中では謳われています。
魅力的ですね。
既存のビジネスもうまくいっており、パイプラインも充実しています。
皮肉なことに大企業アムジェンによる買収のターゲットになってしまいましたが、買収されるということは将来性に魅了があるから。
アムジェンに買収はされますが、この会社で働くことは良い選択肢だなと感じました。
ホライゾン・セラピューティクス・ジャパンとは
さて、ここから日本の話に入っていきます。
日本のホームページのリンクは上記に貼り付けました。
ちなみに日本のホームページはほとんど情報が入っておらず、プレスリリース位です。
設立は2021年。
日本では出来たてほやほやですね。
設立関係の情報はネットで色々情報が落ちておりました。
Horizon Therapeutics Japan合同会社 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-12-1 渋谷マークシティW 22F
2023年3月時点の日本のホームページ情報では渋谷にオフィスを構えているようです。
これもアムジェンとの合併でどうなるか、先のことは不透明ですね。
日本法人ですが、社員数は2022年7月時点で5人と、日刊薬業に情報がありました。
国内第1弾製品の甲状腺眼症薬、来年後半にP3完了 ホライゾン・ジャパンの沖野社長、自社販売に意欲 | 日刊薬業 – 医薬品産業の総合情報サイト
(すべての情報を見るには会員登録が必要です。)
ですので、2023年の2月時点ではまだ1桁台かと思います。
まさに立ち上げという感じ。
ワクワクしますね。
さて、日本法人の社長ですが、これはプレスリリースが出てますので、引用します。
PR TIMES
Horizon Therapeutics plc、グループバイスプレジデント兼日本法人ゼネラルマネージャーに沖野佳秀を任命
沖野は、バイオ・製薬業界の第一線で活躍し、戦略的な役割を数多く担ってきました。直近では希少疾患領域における事業統括責任者として、革新的な治療薬の導入に成功した実績を持っています。ホライゾン入社前は、アミカス・セラピューティクスの日本におけるゼネラルマネージャーを務めており、また、シャイアーおよび武田薬品工業では、希少遺伝性疾患部門のフランチャイズ責任者を務めていました。それ以前には、ベーリンガーインゲルハイムとノバルティスの日本支社のコマーシャル部門において、複数の要職を歴任しました。
PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000096159.html
この方も希少疾患畑の方ですね。
アムジェンとの買収・合併で、今後はアムジェン内に一つのBusiness Unitが作られると予想しますので、そこのヘッドとしてご活躍になる可能性が高いのではと予想します。
はたまた入れ替えもあるかもしれませんが、、、
この辺りは買収したアムジェン側が手綱を握ることになりそうです。
日本で開発の進む最初の新薬 「テプロツムマブ」とは?
さて、日本の開発情報です。
甲状腺眼症の治療薬のテプロツムマブのPh3が動いています。
2022年初頭に始まり、2022年末にエントリーがすでに完了したことがプレスリリースで発表されてます。
試験開始情報(2022年2月24日)
Horizon Therapeutics plcが活動性甲状腺眼症(TED)の治療用テプロツムマブを評価する、日本での第三相臨床試験(OPTIC-J)を開始
試験のエントリー完了情報 (2022年11月17日)
Horizon Therapeutics plcは、活動性甲状腺眼症治療のためのテプロツムマブを評価する、日本での第3相臨床試験(OPTIC-J)の登録完了を発表
エントリー早っ!!
と思いました。
アンメットニーズが高いんですね。
ただ調べたら試験のサイズも50例程度と大きくないので、納得です。
試験の詳細はこちらからアクセス可能です。
少し病気や試験のことについても触れていきます。
これもプレスリリースの引用を活用させてもらいます。
”甲状腺眼症(TED)について
TEDは難病の一つで、進行性で失明する可能性がある希少な自己免疫性眼疾患です。TEDはバセドウ病を持つ人々が発症することが多いですが、 IGF-1Rを媒介する球後眼窩内の細胞シグナリング複合体を活性化する自己抗体によって起こる別の疾患です。これが一連の悪影響につながり、失明などの長期にわたる回復不能な損傷を起こすことがあります。TEDは、眼痛、腫れ、眼球突出、複視などの炎症性の兆候や症状が次第に進行する急性(活性)の段階に始まります。疾患は、その後慢性期に入り炎症が消滅又は著しく減少しますが、大きな兆候や症状は残る場合があります。
PR TIMES 2022年2月24日 Horizon Therapeutics plcが活動性甲状腺眼症(TED)の治療用テプロツムマブを評価する、日本での第三相臨床試験(OPTIC-J)を開始
TEDというのはThyroid Eye Disease(甲状腺の眼の病気=甲状腺眼症)の略です。
バセドウ病を持つ人が発症することが多いとされています。
余談ですが、こういちの大学の同級生に一人、バセドウ病を発症した友人がいました。
食べても食べてもお腹が空いて痩せてしまう、汗がとまらないという症状が続いて、3週間ほど学校を休み、その間病院に入院。
診断の結果「バセドウ病」ということで、
汗がとまらず、眼球が少しずつ前に出てくる、いわゆる眼球突出の症状も出ていました。
苦労の様子を身近で感じたことがあるので、こういった症状に対して治療薬が出ることは喜ばしいことだなと感じました。
”試験について
OPTIC-J試験は、中等度から重度の日本人活動性TED患者の治療におけるテプロツムマブの有効性、忍容性、および安全性を評価する無作為化、二重遮蔽、プラセボ対照、並行群間比較試験です。試験方法は、欧米で実施された第3相臨床試験(OPTIC試験 https://ir.horizontherapeutics.com/news-releases/news-release-details/new-data-phase-3-teprotumumab-trial-optic-shows-dramatic)に基づいています。
組入れ基準を満たした成人の参加者は、テプロツムマブまたはプラセボを投与するために1:1の割合で無作為に割り付けられ、3週に1回、合計8回の投与(初回は10 mg/kg、残り7回は20 mg/kg)が行われました。
有効性の主要評価項目は、24週目の眼球突出改善率であり、ベースラインからの眼球突出が2mm以上減少し、眼球突出の悪化(2mm以上の増加)がない被験者の割合で評価されます。二重遮蔽投与期間を終了し、24週目に眼球突出ノンレスポンダーは、オープンラベル投与期間に参加して、テプロツムマブの8回の投与をさらに受けることができます。”
PR TIMES 2022年11月17日 Horizon Therapeutics plcは、活動性甲状腺眼症治療のためのテプロツムマブを評価する、日本での第3相臨床試験(OPTIC-J)の登録完了を発表
主要評価項目が眼球突出改善率なんですね。
突出が減少するというのがいいですね。突出は不可逆的なものだと勝手に思っていましたので。
私が大学生の時にこの薬が出ていれば、友人も救えたかもしれないなと感じました。
その次の期待の新薬は?
個人的な注目はDazodalibep
Ph2 Primary Meet 2023/1/18
Horizon Therapeutics plc Announces Phase 2 Trial Evaluating Dazodalibep for the Treatment of Sjögren’s Syndrome Meets Primary Endpoint in the Second Study Population; Only Phase 2 Trial to Meet Primary Endpoint in Both Patient Populations
Phase 2試験がいま4つの適応症で走っています。
- シェーグレン症候群治療薬
- 関節リウマチ
- 巣状分節性糸球体硬化症
- 腎移植拒絶反応
そのうちの1つの適応症、シェーグレン症候群にてPrimary EndpointをMeetしたと、2023年1月にプレスリリースされています。
Ph2が成功したということで、Ph3成功の確立が一気に高まったと思います。
特に自己免疫疾患であるシェーグレン症候群には有効な治療手段が欠しいとされていますので、このニュースは患者さんにとっても喜ばしいニュースになろうかと思います。
早く薬が実用化されるといいですね。
Ph3にはぜひ日本もエントリーしてもらって、ドラッグラグがないように進めて頂きたいです。
気になるホライゾンの求人や年収は?
ごめんなさい。
こちらはネットを探しても見当たらず。
唯一あったのは米国のRSU付与の有無
「ストックオプションはない、RSUだけ」という記載を見つけました。
どうやらあるようです。
日本の社員数は少ないので、付与の可能性は高そうです。
エージェントについても、この会社については私は情報を持ってません。
知ってるよ、という方いたらこっそりTwitter で教えて下さい。
社長がシャイアーやノバルティスで働いていたので、過去に一緒に仕事をしてきた人に個別で声掛けしてるかも知れないですね。
この規模の会社なら充分考えられます。
また気になるのは今後の合併。
アムジェンと一緒になるのはいつなのか?
通常、アメリカの法人統合が先にきて、そのあと各国の法人統合が続きます。
日本についても、この流れになるのではと予想します。
法人統合までは通常、1-2年掛かることも珍しくありませんので2023年中であれば、もしかするとホライゾン社員としての入社が叶うかも知れません。
ホライゾン社員として入社すれば、高い年収とRSUが期待できます。
しかし、アムジェンに統合されれば、水準が下がってくると思います。
アムジェンはRSUも一定以上の職位じゃないと出ないみたいですしね。
アムジェンとの統合を控えるので一時的に採用をストップしているという噂も入ってきてますが、気になる方は積極的に情報取ってみてください。
以下の企業であれば何らかの情報を持ち合わせているかもしれません。
エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。
JAC Recruitment 外資系案件に強みをもっています。
マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。
リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。
【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。
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機会損失しないように!
ということで本日は以上です。
引き続き情報あればUpしていくようにしたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました!
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