この記事を読んでわかること
・メドペイスジャパンが開発中のION363について
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こんにちは。
外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
今日は、治験情報一覧を眺めていて気になった会社と薬があったので、そのことを深堀していきたいと思います。
私は「主たる治験情報」を業務の関係で良く目にします。
これはいま日本で動いているPh3もしくはPivotal study(≒承認申請のための臨床試験)がまとまっているサイトです。
薬物だけでなく、機械器具等・加工細胞等の情報も下記のような形で、まとまってます。
主たる治験情報
主たる治験は、国内開発の最終段階である治験で、通常、効能・効果及び用法・用量が一連の開発を通じて設定された後に実施される有効性及び安全性の検証を目的とした治験が該当します。
薬物については、適応疾患に関わらず、新医療用医薬品としての承認申請(効能追加等を含む)が見込まれる全ての治験薬を対象とします。
なお、バイオ後続品やジェネリック医薬品は該当しません。(薬物)
主たる治験情報リスト(PDF[403.17KB]・Excel[116KB])(2024年5月31日更新)
(機械器具等・加工細胞等)
主たる治験情報リスト(PDF[232KB]・Excel[45.2KB])(2024年5月31日更新)
前回公表された治験届の内容から変更があったもの、新たに追加された治験届は、ファイル内の変更箇所欄に印を記載しております。
https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0019.html
製薬会社に勤める人はブックマーク推奨です。
さて、今日はこのリストから、気になる薬剤をピックアップしました。
CROのメドペイスジャパンが開発しているION363とは?
ION363
FUS-ALS患者における筋萎縮性側索硬化症
第Ⅰ/Ⅲ相
メドペイス・ジャパン株式会社
2023/12/01 ~ 2028/08/31
Excelの一覧をバーっと見ていた時に、ふと目にとまったので、気になって調べてみることにしました。
そもそもメドペイス・ジャパン自体をあまり知らなかったのでそれも含めてお伝えします。
メドペイス・ジャパンとは?
一言で言うと、外資のCROです。
AI君に「メドペイスジャパンとは?」と聞いてみました。
メドペイス・ジャパンは、今日のCRO(臨床研究機関)業界にて高い評価を得ているグローバルCROであるMedpaceの日本法人です1。
Medpaceは、安全かつ効果的な医薬品の開発を促進する使命を掲げており、患者様、医療従事者様、製薬企業様、そしてスタッフが倫理的かつ誠実なサービスを提供できるよう日々努力しています。
設立から30年以上の実績を持ち、40か国以上でグローバルなサービスを提供しています。
東京オフィスは5年前に開設され、最近では大阪オフィスも開設され、日本でのプレゼンスを強化しています。Medpaceは臨床試験の初期段階から第IV相まで、幅広いサービスを提供しています1。
Copilot 「メドペイスジャパンとは?」2024年6月5日
ちゃんとしたホームページもありました。
日本法人設立から間もないCROですね。
ION363以外のPh3試験も数本走らせていることがExcelからも確認ができました。
ION363とは?
ネットで調べたら一番最初にこの記事がヒットしました。
東邦大など、米Ionis社のFUS変異ALSの治験に日本も参画へ:日経バイオテクONLINE (nikkeibp.co.jp)
第65回日本神経学会学術大会(会期:2024年5月29日~6月1日)が都内で開催された。
2024年5月30日の記者レクチャーには、東邦大学医療センター大森病院脳神経内科の診療部長を務める、東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野の狩野修(かの・おさむ)教授が登壇した。
狩野教授は、米Ionis Pharmaceuticals(アイオニス・ファーマシューティカル)社の、FUS遺伝子に変異を持つ筋萎縮性側索硬化症(FUS-ALS)患者に核酸医薬を投与するグローバル治験(FUSION試験、第1~3相治験に相当)に日本が参画することを発表した。
日本での治験は、東邦大学医療センター大森病院のみで実施される。
日経バイオテク 2024.06.04
FUS遺伝子のことがわからなかったのでこれも調べてみました。
FUS遺伝子は、Fused in sarcoma (FUS) とも呼ばれるRNA結合タンパク質であり、主に核内に局在し、転写、選択的スプライシング、RNA輸送などRNA代謝全般に機能します1。
この遺伝子から産生されるFUSタンパク質は、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子の1つであり、神経研究の分野で注目されています2。また、FUSはDNA修復や神経細胞の機能維持にも関与しています2。
Copilot 「FUS遺伝子とは?」2024年6月5日
なるほど、ALSを発症する原因の1つのようですね。
さらに調べていくと、東邦大学の2024年5月29日のプレスリリースに辿り着きました。
このプレスリリースにかなり詳細が記載されているので、全文ママに引用でご紹介します。
プレスリリース 発行No.1368 令和6年5月29日
FUS変異による筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治験開始について
東邦大学医療センター大森病院 脳神経内科(診療部長:狩野 修)は、2024年6月より、FUS変異による筋萎縮性側索硬化症(ALS)(注1)患者さんに対する核酸医薬の治験(FUSION試験 第1−3相)を実施します。
米国アイオニス・ファーマシューティカルズ社が開発している治験薬(ION363)(注2)を脊髄内に定期的に投与することで変異型FUSタンパク質が減少し、運動ニューロンの障害を防ぐとされています。今回の治験が開始されることにより、FUS変異によるALS患者さんに対して大きな福音がもたらされることが期待されます。
FUS変異によるALSについて
一般的なALSと異なり、発症年齢が40歳前後と若い方に多く、予後が2~3年と非常に短いのが特徴です*1。
家族性ALSと言われていますが、家系にALS患者さんがいない(de novo変異)場合がほとんどであるとも言われています。FUS変異によるALSの遺伝子検査体制
遺伝子検査は東北大学の青木正志教授、鈴木直輝講師を中心とした日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業「遺伝子治療時代のALS治験即応型レジストリ整備とサロゲートマーカーの探索」として、東北大学、東京大学、東邦大学、愛知医科大学、滋賀医科大学、徳島大学の6施設で実施しています(図)。
今回の治験での遺伝子検査の対象は、家族にALSの方がいる患者さん、もしくはALSの方がおらず40歳以下で発症した患者さんとなります。治験の対象者及び概要
今回の治験対象は12歳以上で、遺伝子検査でFUS変異を有しており、肺活量が50%以上であるALS患者さんです。
登録期間は2025年3月までとなります。
実薬とプラセボ(薬効成分のないお薬)が2:1の割合で無作為に割り付けられ、脊髄腔内に投与されます。詳細は、東邦大学医療センター大森病院 脳神経内科までお問合せください。
治験の実施機関は東邦大学医療センター大森病院のみとなります。本治験に関する詳細につきましては、以下のサイトをご覧下さい。
jRCT 臨床研究等・治験計画情報
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031240101用語解説
(注1)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ALSは進行性の神経変性疾患で、四肢の筋力低下、呼吸筋麻痺などを急速に来し、予後が3~5年と非常に短いのが特徴です。日本には1万人の患者さんがいるとされ、そのうち5~10%が遺伝性であり、家族性ALSとも呼ばれています。家族性ALSで最も多いのはSOD1変異を有するALSで、FUS変異は2番目に多いとされています。SOD1に対する核酸医薬は、バイオジェン社 のQALSODYⓇ(トフェルセン)が米国において2023年3月に承認されました。(注2)治験薬(ION363)
今回の治験薬であるION363は、アンチセンスオリゴヌクレオシドという核酸医薬です。
このアンチセンスオリゴヌクレオシドによりFUS変異を有するALS患者さんのメッセンジャーRNAを減少させ、最終的に毒性を獲得したFUSの産生を低下させます。参考文献
(*1)Suzuki N, Nishiyama A, Warita H, Aoki M. Genetics of amyotrophic lateral sclerosis: seeking therapeutic targets in the era of gene therapy. J Hum Genet. 2023 68(3):131-152. doi: 10.1038/s10038-022-01055-8.
添付資料
図. FUS変異の遺伝子検査実施施設
以上
東邦大学 2024年5月29日プレスリリース
とのことだそうです。
だいぶ詳しく解説されているので、これで概要は掴みにいけたかと思います。
アンメットニーズの高いFUS変異による筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する新薬の治験が始まりました。
これは注目です。
IONISとは?
そもそもExcelを眺めて、この薬が目にとまったのは、メドペイスをあまり知らなかったからということもありますが、開発コードにIONとついていたからです。
「あっ、これIONISじゃないか?もしかして・・・」
と思って調べたのがきっかけです。
IONISについては、以前 N of 1についてブログ記事をまとめた時にその存在を知ることになりました。
IONISはアメリカの製薬会社です。
希少疾患に特化していることで知られています。
日本で発売している薬だと、脊髄性筋萎縮症のスペンラザ®(ヌシヌルセン)が有名です。。
バイオジェンが日本では発売していますが、この薬はIONISと共同開発したものです。
IONISについてもAI君に質問してみました。
「IONIS pharmaceuticalsについて教えてください。またIONISの薬で日本で発売されている薬もピックアップしてください。」
Ionis Pharmaceuticalsは、RNAターゲットの治療薬を開発・商業化するバイオテクノロジー企業です1。
以下に詳細を説明します。
- 会社概要:
- Ionisは、RNAターゲットの治療薬のリーディングイノベーターであり、患者のために革新的なブレークスルーを提供しています。
- 30年以上の実績を持ち、40か国以上でグローバルなサービスを提供しています1。
- 薬剤の開発:
- Ionisは、アンチセンス技術を使用して、RNAと精密に相互作用する治療薬を開発しています。
- 現在、5つの市販薬と10以上の中・後期開発薬があり、患者の未来を変える治療法を提供しています2。
- 日本での薬剤:
Ionisは、患者の未来を変えるためにRNA技術を活用しています。
3: Ionis Earns $10 Million Milestone Payment from Biogen for Advancing New Drug Candidate
2: Our Antisense Medicines | Ionis Pharmaceuticals, Inc.
4: Otsuka and Ionis Enter into Licensing Agreement Covering Hereditary Angioedema Drug Candidate Donidalorsen in Europe
Copilot 2024年6月5日時点の回答
今日は詳しく触れませんが、大塚製薬と、遺伝性血管性浮腫の治療薬でも提携しているんですね。
他にも他の製薬会社と提携している治療薬があったと記憶していますが、今日はそこまでの深堀はやめておきます。
希少疾患の薬の開発に特化していて、RNA薬に強みを持つアメリカの製薬企業ということを、みなさんには覚えておいてもらいたいと思います。
IONISの日本上陸はあるのか?
ここまで調べてみて、IONISの日本上陸の可能性について個人的に考えてみました。
現状は、おそらく上陸の可能性は低いと見ています。
家族性ALSで最も多いのはSOD1変異を有するALSで、FUS変異は2番目に多いとされていますが、SOD1に対する核酸医薬は、バイオジェン社 のQALSODYⓇ(トフェルセン)がすでに発売しています。
この流れから、開発が成功した時にはFUS変異に対するALS薬もバイオジェンが発売するのではないかと推察します。
顧客も同じですでに販売網もありますので、新たに日本法人を設立する必要性が薄いというのが理由です。
ただ、これはどうなるかわかりません。なぜならトフェルセンの時と違い、共同開発はしていないからです。
IONISパイプラインリストを見てみると、、、
この中で、ION363(Ulefnersen)は明確にIonis-Owendと記載されています。
(ちなみにトフェルセンはPartnerにBiogenと入ってます)
つまり、この薬は俺のものだ!と主張しているわけです。
さらにIONISはこれ以外にもたくさんのパイプラインを有しています。
いくつかの薬を引っさげて、近い将来日本上陸(≒日本法人設立)があるかもしれません。
ただ、これは憶測です。
可能性は高くないですが、あるかもしれないな、、、レベルの憶測です。
ただ、そうなると面白い企業が日本に参入してくることになるので、個人的には大変興味をそそられます。
もし上陸するなんて話をキャッチした方いらっしゃいましたら、ぜひこっそり教えてください。
外資CROの求人ならAnswersさん
最後にCRO関連の情報です。
メドペイスのような外資CROの求人を得たいと思ったらAnswersさんは要フォローです。
昨日、Xでも以下の求人のことをつぶやきました。
外資のCROはManager Levelでも1800万円を出せるまでに成長したのかと驚いたので、Xでご紹介しました。
こんな案件が取れるのがAnswersさんです。
Answersさんについての詳しい解説は以下のブログでもしてますので、良かったらご一読ください。
またやJAC Recruitmentさん、ランスタッドさんはも外資には強いエージェントになります。
海外の製薬会社やバイオベンチャーが開発している薬剤を日本に持ってくるようなお仕事に携われるのは、外資CROの魅力かと思います。
もちろんそういう部署に所属する必要はあると思いますが、個人的にはドラッグロスに貢献できる仕事だと思うので開発に携わる方のキャリアとしては良い選択肢ではないかなと思います。
ということで本日の記事は以上です。
IONISの今後の動向に注目です。
なにより。ION363の治験が成功し、FUS遺伝子を持つALSの患者さんの福音になることを願っております。
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