この記事を読んでわかること ・VISIONの有用性 ・VISIONの作成のステップ ・VISIONのリマインドの重要性
どうも、こんにちは、外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
さて、今日は製薬会社のチームマネジメントに関するコンテンツをお届けします。特に営業組織向けです。
ただし、今日の内容は製薬会社に限らず、どこの組織にも、またチームにも当てはまる内容になっているかなと思います。
若手向けというよりも、チームリーダーや組織を管理する人向けの内容です。
さて、これまで、TOP MR(全国上位10位以内)を3年続けた過去を持っているこういちですが、その結果はある営業所長(Y所長)との出会いによってもたらされたといっても過言ではありません。
Y所長は、私が当時所属していた全国下位に位置する営業所を、配属2年目で全国3位の営業所にし、3年目で全国1位に導いた実績を持っています。
またその後、別の地区に異動されますが、そこでも3年後にまたも全国1位の営業所を作り出しています。
つまり、再現性のあるマネジメント手法を用いて、部下の成績を向上させた実績を持っています。
*数字の改善を導いた指導については以下のnote(有料)にまとめています。
現在ではさらに出世をされ、外資系製薬会社の営業部長として、バリバリ大活躍されており、今でも懇意にさせて貰っている尊敬する大先輩です。
今日はそんな大先輩であるY所長が実践されたチーム運営の1st stepについてご紹介します。
VISIONの有用性
MRの方に質問です。
あなたはなんのためにその薬剤の情報提供活動をしていますか?
次の質問です。
あなたのチーム(営業所)はなんのためにその薬剤の情報提供活動をしていますか?
いま、2つの質問をさせて頂きました。
この2つの答えが一致していて、かつ、組織全員が同じ解答もしくは似た解答を出来る組織は強い組織です。
言い換えると、
「組織のVISIONがメンバー全員に浸透し、個々のレベルにまで落とし込まれている組織」と言い換えることも出来ます。
何故、こういう組織が強いのでしょうか?
それは一人一人の仕事に向かう姿勢が「そのVISION(目的)を達成するため」の姿勢に変化するためです。
「その仕事はVISION(目的)を達成するための仕事か?」
こういった価値判断基準が自然とチーム内で生まれます。
これはチームの共通言語としても活用が可能です。
またVISIONが個々のレベルで浸透している組織では、情報共有や結び付きが活発になると言われています。
同じ目的に向かってチーム員が動くため、使える情報は共有し合おう、協力し合おうという意識が強くなるためです。
チームにVISIONが浸透している状態にはこういったメリットがあります。
いかがでしょうか?
改めてお聞きします。
あなたのチーム(営業所)はなんのためにその薬剤の情報提供活動をしていますか?
もし、メンバー全員が全然違う回答をしていたり、違う回答になりそうだと感じた若手リーダーのあなた。
これはチャンスです。
なぜなら、改善に向かうポイントが見つかったからです。
では、どういうプロセスで、チームVISIONは作成されるべきでしょうか?
次の章で、その具体的プロセスに触れていきます。
VISIONの策定ステップ
〇具体的なプロセスは以下になります。
- リーダーが3つ程度の案を策定。チーム員に提示。
- 投票を実施。同時に、細かい文言の修正や入れたい文言がないか確認。
- 最終案を提示し、再度修正が必要ないか確認。
- チーム員全員の納得を確認し、最終化
この4つのステップになります。
①まず、最初は3つ程度の案の提示です。
ここは、メールベースではなく、口頭での提案がいいでしょう。
理由はあなたの想いを直接伝えることが出来るためです。
なぜVISIONが必要なのか?なぜこういうVISIONが必要なのか?
ぜひ熱を持って話してください。
②次は投票です。必ず、投票を行なってください。
全員で決めたというプロセスを経ることが重要です。
「選択した」という事実が、個々人の納得度合いを高めてくれます。
また細かい文言の修正やチーム員が入れたい文言には注意深く耳を傾けてください。
③続いて最終案を提示し、再度修正が必要ないか確認します。
一つに絞れた後も、言い残しがないか、修正したい点がないか改めてチーム員に確認下さい。
何度も確認することが、個々人の納得度合いを高めてくれます。
④最後に、チーム員全員の納得を確認し、最終化します
晴れて完成です!
VISION策定と運用の注意点
注意その1: VISIONが独りよがり
これまで営業以外の組織のVISION策定にも数多く携わってきましたが、気を付けたいのは、VISIONが独りよがりにならないようにすることです。
ありがちなのは、リーダーがVISIONを一つ作ってきて、そこにみんなの意見をちょこっと入れて完成というプロセス。議論の時間もせいぜい15-30分程度。
でもこれだと、全然思い入れのあるVISIONになりません。
リーダーが考えてきた独りよがりなVISIONになる可能性があります。
VISIONとは、自分達の目指す方向性や仕事のあり方、目的が含まれたステートメントです。
なので非常に重要なものです。
ここがブレると組織としての強みが発揮できません。
全員が腹落ちした状態で完成されていることが理想です。
注意その2:VISIONの形骸化
これは超ありがちですが、VISIONが形骸化してしまうケースに注意が必要です。
自分達のチームのVISIONは?と聞かれて、全然答えられないメンバーが多い組織はVISIONが形骸化している可能性が高いです。
このVISIONを組織に浸透させる役割はリーダーにあります。
浸透のために何をするか?
そうです。リマインドです。
事ある毎にリマインドしてください。
会議の冒頭に入れる、メールの本文に入れる、普段の会話にも入れる、
意識的にVISIONをリマインドしていくことが大切です。
それがリーダーの仕事です。
意識的に行ってください。
Y所長のケースでお伝えすると、Y所長は月1の会議冒頭に必ずチームVISIONを提示していました。
PPT1枚で5分程度、毎回熱くVISIONについて語ります。
自身の身の上話や具体的な患者さんの話を交えながら、「なぜ我々が策定したVISIONに基づいて仕事をしなければならないのか?」を説明されていました。
不思議なもので毎回同じVISIONを提示されるのですが、Y所長の身の上話や具体的な患者さんの話を交えながら話を聞くと、都度新鮮な気持ちで話を聞くことが出来ました。
参考までに以下が我々のVISIONです。
「我々のVISIONは〇〇病で苦しむ患者さんに、有効性と安全性に優れた〇〇薬が最も多くかつ迅速に提供されている都道府県を作り出すことです。標準治療の(隠れた)副作用を撲滅しよう!」
これは新薬発売時に立てたチームVISION です。
*以下はVISIONの補足です。
「最も多くかつ迅速に提供されている都道府県を作り出す」
→一位になること。採用を早めていく意思表示です。
「標準治療の(隠れた)副作用を撲滅しよう!」
→競合は標準治療であることを明確化させました。これは、新薬ラッシュが相次いでいた市場環境において、パイの小さい競合品(新薬)に目を向けるのではなく、パイの大きい競合品(標準治療)に目を向ける狙いがあります。
ポイントはVISIONが正しい、正しくないではありません。
多分、これって正しいの?もっと良い表現とかあったんじゃない?と思われた方も中にはいらっしゃるかなと思います。
でもいいんです。
なぜなら、このVISIONは全員が投票し、細かく文言も話し合って、全員で作ったVISIONだからです。
全員の意見が反映されて、腹落ちしたVISIONになっているかどうかが重要です。
このVISIONに基づき我々の営業所は活動しました。
共通認識、共通の価値基準が生まれたので、議論がしやすかったことを覚えています。
結果、発売初年度は全国2位、翌年度全国1位と見事な成績を残すことが出来ました。
VISIONの効果は大きかったです。
後にMBAの授業で勉強し、分かったことは、この手法は組織に変革をもたらすVISION型リーダーシップのスタイルを活用した事例であったことも分かりました。
VISION型リーダーシップ:詳しくはこちら
Y所長が学問的なことを意識されて取り組まれたかは定かではありませんが、素晴らしいリーダーシップを発揮されていたと思います。
ということで本日は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございました!
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