この記事を読んでわかること ・心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の開発秘話
どうも、こんにちは。
外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
さて、今日は以下Twitterでツイートした内容について、詳しくお伝えしていきたいと思います。
お伝えしようと思った背景も含めて、ブログにまとめたいと思います。
お伝えしようと思った背景
なぜお伝えするかというと、素晴らしいストーリーだと感じたからです。
もともと、池井戸潤さんの『下町ロケット』シリーズが大好きで、ガウディ計画も含めて、実は全巻制覇しています。
ガウディ計画はテレビドラマにもなっています。
2015年のことですね。これも全部見ました。
もうそんなに前なんだ・・・
子供を救うために奔走する方々のストーリーがとても感動的な作品です。
実は、この時はこれが実話に基づく話とは知りませんでした。
ご存じの方も多いと思いますが、私はヘルスケア関連のプレスリリースを見るのが好きで、よくTwitterでも情報共有してます。
いつもの習慣でプレスリリースを見ていた時に、たまたま目についたのがフクイタテアミのプレスリリースでした。
それがこちら
実は最初パッと見たときには、下町ロケットのガウディ計画のことだとは全然わかりませんでした。
でも中身を読み進めていくと、「あれ?これ下町ロケットのガウディ計画の話にそっくりだな、、、もしかして。。。」
っと思って、調べてみたら、ずばりモデルケースでした。
プレスリリースには下町ロケットのガウディ計画のことに触れられていないので、気づかない方は気付かないだろうなと思います。
プレスリリースの内容を紹介
素晴らしいストーリーが凝集されているプレスリリースになりますので、引用という形で全文紹介させて頂こうと思います。
先天性心疾患への外科治療における新たな選択肢
心・血管修復パッチ「シンフォリウム」が製造販売承認を取得
2023年 7 月 12 日
福井経編興業株式会社
大阪医科薬科大学
帝 人 株 式 会 社
帝人メディカルテクノロジー株式会社
大阪医科薬科大学(所在地:大阪府高槻市)、福井経編興業株式会社(本社:福井県福井市)、帝人株式会社(本社:大阪市北区)が先天性心疾患の患者さんの課題解決のため共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「OFT-G1(開発コード)」が、7 月 11 日付で厚生労働省より製造販売承認を取得しました。今後、製造販売を担う帝人メディカルテクノロジー株式会社(本社 :大阪市北区 )が中心となり、販売名 「シンフォリウム」
(以下、本製品)として 2023 年度中に上市することを目指します。
1.背景・経緯
(1)先天性心疾患の治療では、パッチ状の医療材料を用いて狭窄部や欠損部の血液循環を正常化する手術が行われます。
患者さんが新生児や幼児のうちに手術を行うことが多く、子供たちが成長していく中で、埋植したパッチが異物反応を受けて劣化したり、成長に伴ったサイズ増大がないことによって手術部の狭窄が発生したりします。これにより、再手術によってパッチを交換する必要が生じることは少なくなく、患者さんや医療者を悩ませていました。
(2)この課題に対し、大阪医科薬科大学の根本 慎太郎 教授が“自分の組織に置き換わることで患者さんの成長に伴うサイズ増大に対応できるパッチ”のアイデアを打ち出し、福井経編興業が伝統的な繊維産業の高度な経編の技術によって、特別な編み地構造に細胞を取り込み伸張可能な心・血管修復パッチの試作品を考案し、完成させました。そこに、医薬品や医療機器の研究開発および製造販売を手がける帝人が、製品化に向けた設計開発や薬事申請などを担う役割として参画し、2014 年から3者による共同開発を行ってきました。
(3)2018 年 4 月に先駆的医薬品等指定制度(旧:先駆け審査指定制度)(*)に指定され、2019 年から開始した臨床試験が 2022 年に完了し、主要評価項目の達成が確認されたことで、2023 年 1 月に製造販売を担う 帝人メディカルテクノロジーが厚生労働省に製造販売承認を申請し、このたび、承認の取得に至りました。
(4)本製品は先天性心疾患と闘う患者さんの悩みをアカデミアが拾い上げ、中小企業と大企業がそれぞれの 技術力とノウハウを持ち寄り、強い協力関係によって製品化に至った、我が国でも数少ない成功例と言えます。
(*) 患者に世界で最先端の医療機器等を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な医療機器等について、薬事承認に関わる相談・審査における優先的な取り扱いを行い、迅速な実用化を図る制度。優先審査における申請から承認までの総審査期間の目標は6カ月とされている。
2.心・血管修復パッチ「シンフォリウム」について
(1)本製品は、吸収性の糸と非吸収性の糸による特殊な構造のニットを吸収性の架橋ゼラチン膜で覆い、一体化させたシートです。手術によって心臓や血管に縫着された後に、まずゼラチン膜が、次に吸収性の糸が徐々に分解され、自己の組織が本製品を含むように形成されます。この自己組織化は、従来の製品で見られた異物反応や石灰化などの問題が発生しにくいという特長があり、手術材料に起因する再手術リスクの低減が期待されます。
2019 年 5 月に開始された臨床試験においては、本製品によると考えられる不具合や再手術は、現在まで発生していません。
(2)本製品の開発においては「先駆け審査指定制度」に加え、2014 年からは経済産業省、2017 年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による合計 6 年間の医工連携事業化推進事業(補助事業課題名「術後の QOL を改善させる心・血管修復シートの事業化」)に選定されるなど、国からの多くの支援を得て実用化の道を進んできました。
3.開発メンバーからのコメント
【大阪医科薬科大学 胸部外科学教室 教授 根本 慎太郎】
何度も挫けそうになる開発メンバーを鼓舞し続け、学会や規制当局の協力を得ながらここまで来ました。しかし、まだまだ乗り越える課題は山積しています。
やっと「始まりの終わり」に来ました。患者さんに選ばれるパッチに向け、さらにメンバーと進んで参ります。
【福井経編興業株式会社 代表取締役社長 髙木 義秀】
長年培ってきた編み技術を駆使し、開発メンバーの皆さまとワンチームで作り上げた「シンフォリウム」が先天性心疾患の患者さんやご家族の再手術の負担を減らすことに役立つことを期待しています。クリーンルームの設置や、医療機器の品質マネジメントシステムの認証を取得し、品質管理を徹底して行っています。来年創立 80 周年を迎える当社が、新しいページとして、この「シンフォリウム」を通じて子供たちの未来に貢献ができることを嬉しく思います。
「シンフォリウム」に留まることなく、安心安全なものづくりで今後も様々な開発に取り組んでいきます。
【帝人株式会社 再生医療・埋込医療機器部門長 中野 貴之】
先天性心疾患の患者さんやご家族の再手術による負担を減らしたいという希望を、多くの医師から聞いていました。
多くの関係者と連携・協業を通して作り上げた「シンフォリウム」が、患者さんやご家族の QOL 向上に役立つことを心より期待しています。また、メーカーとして、この日本発の新たな医療材料を世界に普及させることや、この素材を活かした別の医療機器の開発にも今後取り組んでいきます。
4.今後の展開
今後、帝人メディカルテクノロジーを中心に、いち早い上市、すなわち「患者さんに届ける」ための準備を加速していきます。
市販後には、我が国での本製品を用いた手術症例の集積と解析を継続し、長期の有効性と安全性の確立を図ります。
そして、世界でも類を見ない技術を用いた本製品の海外への事業展開、加えてその要素技術を応用する新製品ラインアップの拡充に取り組んでいきます。2023年7月12日 フクイタテアミ共同プレスリリース
以 上
【 当件に関するお問合せ先 】
帝 人 株 式 会 社 広報・IR 部 TEL:(03)3506-4055
福井経編興業株式会社 総 務 管 理 課 TEL:(0776)54-3602
大阪医科薬科大学 医学研究支援センター産学官連携推進室 TEL:(072)684-7141
いかがでしたでしょうか?
下町ロケットのガウディ計画を知らない方が読んでも、感動を覚えるプレスリリースの内容ではないでしょうか?
2014年から3社で共同で開発を進めてきたとありますが、コミュニケーションはきっとそれよりも前からあったのでしょう。
10年以上前から取り組んできた事業が、こうして承認を迎えることが出来たのは大変すばらしいことだと思います。
国の支援も素晴らしいですね。
『2014 年からは経済産業省、2017 年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による合計 6 年間の医工連携事業化推進事業(補助事業課題名「術後の QOL を改善させる心・血管修復シートの事業化」)に選定されるなど、国からの多くの支援を得た』
と紹介されています。
まさに産官学が連携して生み出された製品で、多くのアカデミアや企業の参考になる事例であろうと感じました。
帝人メディカルさんの心意気にも触れることができ、一気に会社に対する好感度が高まりました。
発売を2023年中に目指しているとのことですので、ぜひ頑張って頂きたいと思います。
フクイタテアミのホームページも紹介
フクイタテアミのホームページにはプレスリリースには盛り込まれていない心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の開発物語が描かれています。
シルクを編み込む技術で人工血管福井経編が新技術を発表してから髙木氏は新たな挑戦を決意。
それはメディカル分野への挑戦だ。“シルクの糸で人工血管を編めないか?”という、ある大学教授からの問い合わせがきっかけだった。
“私たちの技術が、病気で苦しむ人たちの助けになるかも知れない”という熱い思いだけが根源だったという。狙ったのは6ミリ以下の細い小口径人工血管。
髙木氏は社内で人工血管プロジェクトチームを結成し、毎日試作と検証を繰り返した。
簡単に人工血管といっても口径のサイズや、密度の調整、しかも血栓ができにくい人工血管を成功させるのは至難の技だった。
やがて試行錯誤を経て、見事に小口径人工血管の製造技術の開発に成功したのである。
根本教授との出会いが前進させた心臓修復パッチ人工血管の成功は多くのメディアから注目され、大阪医科大学の心臓血管外科医・根本教授の目に留まり髙木氏に連絡が入った。
すぐに根本教授の病院に行くと、手術室の前には海外製の医療機械がずらりと並んでいた。
“日本には素晴らしい技術があるのに、どうして海外製品ばかりなのか”根本教授と髙木氏は意気投合し、医療機器開発のアイデアを語り合った。
根本教授によると、先天性に心臓に病気のある子どもの手術に使う材料である心臓修復パッチは、現在のものは劣化や伸展性に課題があり、手術術式によっては5年間に約50%の子どもが再手術を受けている現実があるという。
患者である子どもと、その家族にとって大きな負担となる心臓手術は、できるかぎり一回で終らせたい。
再手術を回避するには、成長に対応する心臓修復パッチがあればいい。埋め込んだ後は、子どもの成長と共に伸びていくような布素材の心臓修復パッチをつくれないだろうか?という内容だった。
髙木氏は根本教授と共に心臓修復パッチの開発を決意した。そして子どもの成長に合わせて一緒に伸長するパッチの開発は自社の技術で可能となった。また、ポリマーの知見を持つ大手企業帝人株式会社との協働が実現し、開発は一気に加速していった。
引用:フクイタテアミ下町ロケットストーリー
ホームページの中には、作家の池井戸潤先生との出会いのきっかけなども書かれていますので、ご興味ある方はぜひご覧いただければと思います。
ここからはこういちの感想です。
この物語を読んで、私は純粋にかっこいいなと思いました。
こういう仕事には憧れます。
情熱がないと出来ない仕事だと思います。
10年以上の歳月を掛けて、ようやく発売の一歩手前のところまできた。
開発に関わって来られた方々の想いを想像するだけでこちらまで胸が熱くなります。
ほんとすごいですね。
こういう仕事、情熱を持って取り組める事業に感動を覚えました。
素晴らしい話でしたので、多くの方に知って頂きたいなと思い、この内容をブログで紹介することにしました。
ということで今日の内容は以上になります。
今日は金曜日ですね。
明日から三連休。
ラスト一日がんばりましょう!
最後に下町ロケットのガウディ計画の書籍のリンク貼っておきますね。
スリルと感動が味わえる作品です。ご興味ある方はどうぞ!
コメント