この記事を読んでわかること ・Amicus社のこと ・日本で2024年-2025年発売予定の新薬AT-GAAのこと
どうもこんにちは、外資系製薬会社経営企画室に勤めるこういちです。
今日はこの間のUltragenyxの記事に登場したAmicus社を取り上げたいと思います。
この間の記事はこちら
以下の一文を上記記載のブログに残しました。
”アミカス社的には、開発した製品を持っていかれた形になるので、気持ちが複雑な人も中にはいるのではと感じましたが、そのあたりの裏事情はどうなっているかまではわかりませんでした。”
開発を担当し、発売までした製品を、2022年の上市直後にUltragenyxに承継した関係から上記のコメントを残しました。
そこでアミカス社のことが気になり、他にパイプラインはあるのかな?と思って、リサーチしてみることにしました。
Googleで調べると、ネット上には色々な情報が落ちてました。
2016年に日本法人も立ち上げていて、7年以上日本でビジネスを展開しているだけありますね。
日本語の公式ホームページも充実してました。
なので、このブログでは他の記事に書いてあるような情報ではなく、最新の情報ということで、2023年の1月にあった41st Annual J.P. Morgan Healthcare Conferenceの情報を元にして、色々と考察を深めていきたいと思います!
もちろん少しは、基礎情報にも触れていきますね。
それではどうぞ!
Amicus Therapeutics
アミカスのはじまりは、同社のCEOであるジョン・クラウリーの二人の子どもがポンぺ病を発症し、余命5年と宣告されたときにさかのぼる。
子どもたちの命を救うため、ジョンはポンぺ病の治療法を研究していたバイオテクノロジー企業の会長兼CEOとなった。
幾多の紆余曲折を経て、ジョンの子どもたちは臨床試験に参加できることとなり、治療を受けることが出来た。その結果、子どもたちは生き延び、現在では成人期を迎えている。
2002年、ジョンはアミカスの執行役員に就任し、のちに同社の会長兼CEOとなった。
2010年に公開されたハリウッド映画『Extraordinary measures (邦題:小さな命が呼ぶとき) 』は、クラウリー家の物語が元になっている。
この映画は、難病を持つ患者とその家族を世界中で勇気づけた。 日本では2010年7月にテレビの人気番組『奇跡体験!アンビリバボー』でクラウリー家の物語が取り上げられ、ポンぺ病とその家族のストーリーが広く知られるようになった。
https://www.jetro.go.jp/invest/investment_environment/success_stories/amicusrx.htm JETRO 2019/12
のっけから引用文ですみません。
この会社の特徴はなんといっても、創業者が二人の希少疾患(ポンぺ病)を子に持つ父親だということでしょう。
引用文にある
ハリウッド映画『Extraordinary measures (邦題:小さな命が呼ぶとき) 』
は私自身も昔から知っている映画です。
とても感動的な作品です。
英語の勉強も兼ねて、多分4-5回は見てます。
「やっぱりヘルスケアや製薬会社で働く人間は患者さんを救いたいというマインドが大切だよな」と思える作品です。
“小さな命が呼ぶとき”
かなり美化されてる部分もあるんだろうなとは思うのですが、感動作品であることには間違いありませんので、良かったら御覧になってください。
多分ネットフリックス、Amazon Primeとかでも見られるんじゃないかなと思います。
さて、以下が会社の沿革です。
こちらも引用で失礼します。
沿革
2002年
米国ニュージャージー州にて創業
2005年
ジョン・クラウリーが会長兼CEOに就任
2007年
米国NASDAQへ新規株式公開
2016年
「ガラフォルド®」EUにて発売
2016年
アミカス・セラピューティクス株式会社を日本に設立
2018年
「ガラフォルド®」日本・米国にて発売
2018年
米ペンシルバニア大学と遺伝子治療の共同研究開発を開始
2019年
27ヵ国で事業を展開し、600人の従業員を抱える
https://www.jetro.go.jp/invest/investment_environment/success_stories/amicusrx.htm JETRO 2019/12
すでに米国では設立されて21年ということで、バイオベンチャーと定義づけるのは怪しいですが、日本ではまだ設立10年未満、社員数も100人未満ということで「外資系バイオベンチャー」と呼ばせて頂こうと思います。
(Googleの検索ワードを意識してこの「外資系バイオベンチャー」と使っている意図もあります。ご容赦ください。)
日本支社設立の時には、引用させていただいたJETROがサポートしていたようですね。
ちなみにGlobal ホームページのリンクは以下です。
Amicus Therapeuticsの”今” 41st Annual J.P. Morgan Healthcare Conferenceの資料を参考に
さて、次は会社の”今”がどんな感じかを、2023年1月にあった41st Annual J.P. Morgan Healthcare Conferenceの情報に基づいて、みていきたいと思います。
詳しく見たい方は上記リンクにアクセスください。
ここから読み取れることを抜粋すると、
・ガラフォルド(ミガーラスタッド)はファブリー病の最初の経口薬であること
・雇用を20カ国で作っていること
・AT-GAAというポンぺ病の新薬が審査中であること
・遺伝子治療のプラットフォームがあること
・現金保有 $355M(1$=100円だと355億円) [2022年9月30日現在]を有すること
などの情報が読み取れます。
また2023年の戦略は
- ガラフォルドの収益の2桁成長の維持
- FDA(米国)、EMA(欧州)、MHRA(英国)のAT-GAAの承認取得
- AT-GAAの国際的発売を成功させる
- ファブリー病とポンぺ病のベストインクラスで次世代のパイプラインの強化
- 黒字化に向けて強固な財務体質を維持する
とのことです。
パイプライン情報なども併せて見てますが、コマーシャル品は現在はガラフォルドひとつだけのようですね。
スライド情報をいくつか抜粋すると、
・ファブリー病においては、最初で唯一の経口薬
・45の国で承認を取得している
・16%の成長
・2022年の売上は$329M (1$100円の仮定だと、329億円)
とのことです。
ふむふむ、このビジネス自体は順調に推移していきそうです。
市場も今後伸びていくことが資料中にも明示されています。
パイプライン情報および新薬
さて、そうなると気になるのは次の新薬やパイプラインですね。
この情報も掲載されていますので、紹介していきたいと思います。
次の新薬はAT-GAAというもので、適応症はポンぺ病となっています。
(それ以外はまだPh1/Ph2なので、情報共有は割愛します。)
では、AT-GAAについて詳しく見ていきたいと思います。
簡潔にお伝えすると、AT-GAAは「cipaglucosidase alfa/ミグルスタットの併用療法」とのことです。
AT-GAAの詳しい説明は、PR TIMESの日本語記事に詳細がありましたので、引用という形で紹介させて頂きます。
治験薬cipaglucosidase alfa/ミグルスタット
ポンぺ病治療のための新規併用療法です。
Cipaglucosidase alfaは、マンノース-6-リン酸(M6P)を増加させることにより、細胞への酵素の取り込みを向上させた遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼです。特に筋組織において、ポンペ病の主要な貯蔵物質であるグリコーゲンを減少させる作用が期待されています。Cipaglucosidase alfaは点滴静注により隔週投与されます。
ミグルスタットは、(N-ブチル-デオキシノジリマイシン)は経口固形製剤であり、血中の cipaglucosidase alfa を安定化させ、活性を維持した多くの酵素を標的組織への輸送を増加させることが期待されています。cipaglucosidase alfaの点滴静注開始の1時間前に投与されます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000032745.html PR TIMES 2022年1月5日
さて、どれくらい効果のある薬剤なのでしょうか?
これもスライドがありました。
Ph3の名前はPROPEL studyと名付けられてます。
全患者群(N=122)だとPrimary endpointの6分間の歩行距離(6MWD)でalglucosidase/placebo群と比較し、有意差付かず、ただし改善傾向はみられています。
KeyとなるSecondary endpoint の努力肺活量(FVC)においては、alglucosidase/placebo群と比較し、有意差を持って改善することが確認されています。
こんな結果です。
続いて酵素補充療法(ERT:Enzyme Replacement Treatment)を経験した患者に絞った場合です。
酵素補充療法を経験した患者に絞った場合(N=95例)だと、先程お伝えしたPrimary endpoint およびSecondary endpoint 共にalglucosidase/placebo群と比較し、有意差を持って改善が確認されています。
安全性情報は今回スライドの中にありませんでしたので、割愛します。
ここからはこういちの考察です。
全患者群(N=122)で見た場合、プライマリーエンドポイントは未達でした。
もちろん改善傾向は見て取れましたが、検定で優位差が付きませんでした。
一方、酵素補充療法を経験済の患者群(N=95)に絞れば、プライマリーエンドポイントも達成という結果が確認されました。
こうなると気になるのは、適応症の範囲でしょう。
いわゆる適応症に制限が付くかどうかです。
アミカス社としては、”ポンペ病”というシンプルな効能効果を取りたいと考えていると思います。
しかし、結果からすると”ポンペ病(酵素補充療法で効果不十分な患者に限る)”といった適応症になる可能性も十分に考えられます。
この、いわゆるカッコ書きが入るか入らないかで製品のポジションニングは大きく変わりますし、投与対象となる患者さんの数も変わります。
そうなると、そこから期待される売り上げも変わります。
臨床試験の結果をFDAやPMDAが今後どう考えるのか?
この点はこの薬剤の今後の注目ポイントになりそうです。
注意:この領域のことに詳しいわけではないです。検討違いでしたら、詳しい方はコメントか、Twitter でDM下さい。記事を訂正するようにします。
2023年には欧州、米国、英国で承認が見込まれるとタイトルにはありますね。
今後に要注目です!
日本の申請情報の記載はありませんでしたが、
Ph3のPROPEL試験には日本も入ってます。
- 北海道大学
- 福岡大学
- 鹿児島大学
- 慈恵医大
- 国立精神・神経医療研究センター
- 和泉市立総合医療センター
で治験がされたようですね。
承認申請はFDAの後に続くはずですので、承認を2024年と予想しています。
*あくまで予想ですので、情報の取り扱いにはご注意ください。承認時期を保証する情報ではありません。
アミカス・セラピューティクス株式会社(日本法人)
さて、ようやく日本法人の話です。
冒頭述べましたが、日本法人設立は2016年。
すでに7年が経過してます。
日本語のホームページは上記のリンクです。
患者向けサイトは充実していますが、多くのリンクがGlobal サイトに飛ぶように作られていて、日本の情報を得るには若干物足りない作りになっている印象がありました。
まあ、しょうがないですね。
日本人の社員インタビューなども載っていますので良かったらアクセスして見てください。
MRの数は2018年の段階で以下の記事が出てます。
【新製品】日本初の経口ファブリー病薬、日本市場に第1号製品投入‐約10人のMRで情報提供 アミカス・セラピューティクス日本法人
アミカス・セラピューティクス日本法人は5月30日、ファブリー病治療剤「ガラフォルドカプセル123mg」(一般名:ミガーラスタット塩酸塩)を新発売した。同社にとって第1号製品であり、ファブリー病治療薬では初の経口薬となる。同社はMR10人程度で自社販売をスタートさせ、先天代謝疾患の患者を診断する大病院を中心に情報提供を開始する。
https://www.yakuji.co.jp/entry65271.html 薬事日報 2018年6月1日
2018年からすでに5年が経過していますが、コマーシャル品は1剤のみですし、患者数も多い疾患ではないため、そこまで爆発的にMR数を増やしているとは思えません。
従って、MR数は10名-20名程度ではないかと思います。
全社員数は30名-40名位ですかね。
このあたりはネットで調べてもよく分かりませんでした。
(情報お持ちの方は教えてください。)
次にMRの数を増やすとすると、AT-GAAの発売のタイミング(日本では2024年予想)ではないかと予想します。
新薬の立ち上げにはマンパワーが必要になりますからね。
そんなAT-GAAですが、実は、現在拡大治験が絶賛進行中。
プレスリリースも2022年1月に出てました。
ポンペ病を対象とする拡大治験を開始
CIPAGLUCOSIDASE ALFA及びミグルスタット併用投与
アミカス・セラピューティクス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:サイモン・コリンズ)は、日本国内の成人遅発型ポンぺ病の患者さんを対象に、開発中の新規併用療法であるcipaglucosidase alfa/ミグルスタットによる拡大治験を開始したことをお知らせ致します。
現在、日本では酵素補充療法の2製剤がすでに承認されていますが、患者さん及び介護者は、新たな治療選択肢が利用可能になることを切望しています。
また、海外において、A micus Therapeutics Inc.では、ポンぺ病患者さんの要望に応えるため、これまでに複数の拡大アクセスプログラム(Expanded Access Program)を企業主導による臨床試験と並行して実施しています。
日本においても同様に、患者さんの要望に応えるため、拡大治験を開始することと致しました。 本試験は安全性の確認に主眼を置いた拡大治験であり、対照群の設定はなく、すべての被験者は隔週でcipaglucosidase alfa/ミグルスタットの併用投与を受けます。
https://www.amicusrx.jp/pdf/news_220105.pdf アミカス社 プレスリリース 2022年1月5日
AT-GAAの拡大治験のリンクはこちら
試験は2023年06月30日までとなっていますね。
拡大治験についてご存知ない方のために、”人道的見地から実施される治験(拡大治験)”に関する厚労省の説明文章を引用の形で載せておきますね。
詳しくみたい方は引用のリンクをクリックしてください。
生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効なものが存在しない疾患の治療のため、未承認薬、未承認機器及び未承認再生医療等製品(以下、「未承認薬等」という。)を臨床使用するに当たっては、当該未承認薬等の使用によるリスクと期待される治療上のベネフィットのバランスを図りつつ、当該医薬品等の開発に支障を生じないことを前提として、これらの患者からのアクセスを確保するため、治験の参加基準に満たない患者に対して人道的見地から未承認薬等を提供する制度
https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0016.html 厚生労働省ホームページより抜粋
ぶっちゃけ拡大治験を実施するのって製薬会社としてはものすごい負担が掛かるわけです。
承認申請にはすでに十分なデータが揃っているのにも関わらず実施するわけですから。
治験を続ける費用も掛かりますし、薬剤の提供費用も追加で掛かります。
追加経費は数百万円で収まる話ではなく、数千万円-数億円に及びます。
GCP下で管理されますから、モニタリング費用はバカになりません。
それでも困っている患者さんがいるのであれば届けようという心意気。
この規模の会社でそれを実現しているのは素晴らしいなと感じました。
アミカスの求人情報
さて、気になる求人情報です。ぶっちゃけ、私はさほど有してません。すみません。
アミカスのMRではない求人を時々Linked inで見かけます。
メールの履歴も調べたら丁度1年位前にDigital Project managerの求人が来てました。
MRの求人は私は受け取ったことはありません。
この規模だとMR同士の紹介で入社しているケースが多いかもしれないですね。
エージェントも絞っているでしょうが、ぶっちゃけどこのエージェントをアミカスさんが使ってるかまでは良くわかりませんでした。
他のブログにはエンワールドジャパンとか【ランスタッド】 と書いてあるものを見かけましたが、真偽のほどはわかりません。
この手の会社の求人情報を得たいのであれば、自ら動いて取りに行かないと情報は中々入って来ないです。
ですので色々な転職エージェントに希望を伝えて情報収集に取り組むことが大切になります。
加えて、Twitterなどで情報収集に励むことをお勧めします。
参考までにこういちが登録している転職エージェント情報を記載しておきますね。
エンワールドジャパン 製薬専門チームありです。
JAC Recruitment 外資系案件に強みをもっています。
マイナビエージェント どちらかというと内資系案件が多い。
リクルートダイレクトスカウト 本社系案件に強い印象。
【ランスタッド】 外資系案件に強みを持っています。
【アクシスコンサルティング】コンサルティング会社に興味があれば、登録しておいて損はないです。特にBIG4(PwC/EY/KPMG/デロイト)とのコネクションが強く、実績を出しています。
登録無料ですし、色々な会社の事情を聞けますので今後のキャリアの参考にもなると思います。
それでは本日は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございました!
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